投資不動産購入計画 ローン購入の場合にはどうなるか

投資不動産購入計画 ローン購入の場合にはどうなるか

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2021年も投資ブームが続き、賃貸不動産への投資も人気は続いているようです。株などに比べれば時価の変動幅が少なく、毎月の賃貸収入も期待できることもあって、安定収入を求める場合には賃貸不動産への投資は向いているといえます。ただ、知識を持たずに始めると、予想以上の手間もかかりますし、急な判断も必要なことから、苦労する方もいるようです。今回は、賃貸不動産にかかわる所得税や収支の一例などについて説明します。

投資不動産と確定申告

投資不動産と確定申告

 

投資用に賃貸不動産を購入して受け取る賃貸料収入は、所得税では不動産所得に該当し、確定申告をする必要があります。給与所得のみの場合には、一部のケースを除いては、会社で年末調整の計算をして年間の所得税額が確定し、住民税も会社で申告してもらえるため、確定申告書を提出する必要はありません。

 

確定申告が必要な場合には、申告不要の分離課税を除き、すべての所得金額と所得控除、税額控除などを集計し、通常は翌年の3月15日までに申告書を提出して納税をします。各所得金額は所得ごとに収入から経費を控除して計算します。その中の一つが不動産所得です。不動産所得や事業所得などは、青色決算書か収支計算書に収入と経費を記載して、収入から経費を差し引いて所得を計算します。所得の計算をするためには、一年間の収入を把握して、必要経費になる領収書等を集めておかなければならず、そのためには何が経費になるかをあらかじめ把握しておかなければなりません。

 

一般的な不動産所得の経費には、固定資産税、火災保険料、ローンで購入した場合の支払利息、不動産業者への管理費や仲介手数料、修繕費、建物の減価償却費などがあります。

賃貸不動産ローン

賃貸不動産ローン

 

賃貸不動産をローンで購入した場合には、通常は毎月ローンの支払いをすることになります。毎月の支払いは元本の返済と支払利息の合計で、支払利息は経費として不動産収入から差し引くことができます。元本の返済は経費にはできません。元本は減価償却費という形で建物の取得費を耐用年数に応じて毎年の経費にしていくことになります。減価償却費と毎年の返済額は、あらかじめ一致するようなローンの組み方をしない限りは、一致することはありません。

 

ローンの一般的な返済方法は、元利均等型と元金均等型の2種類があります。

 

元利均等型

ローンの完済まで毎月同額を支払っていくもので、毎月の同じ支払い金額の中で、利息と元本の金額が変わっていきます。元利均等型は、毎月元本の返済金額が変わるため、ローンの返済表で確認をしないと利息の金額がわかりません。そのため、返済表はいつでも確認できるようにしておく必要があります。

 

元金均等型

ローンの完済まで毎月同額の元本を返済し、利息は返済が進むにつれて減っていくため、毎月の支払額は徐々に減っていきます。元金均等型は毎月の元本返済額がわかれば、残りは利息なので、ローンの返済表がなくても利息の金額がわかります。

不動産所得と損益通算

不動産所得と損益通算

 

通常、支払利息は不動産所得の経費になりますが、例外として、土地建物をローンで購入したケースで不動産所得に損失が出た場合には、支払利息のうちの土地購入の割合にあたる金額は経費にすることができません。空き室が多かったり、修繕費が多かったりして、損失が出た年は注意をしていないとうっかり間違った申告をしてしまうことになります。購入時の売買契約書や借入当初の返済表などをなくしてしまうと、この計算ができなくなってしまいますので、しっかり保管しておきましょう。

ローンでの賃貸不動産購入は得なのか

ローンでの賃貸不動産購入は得なのか

 

では、所得税も加味して、ローンで賃貸不動産を購入した場合の収支のシミュレーションをしてみましょう。以下の想定で計算してみます。所得税率は他の所得と合算して決まってくるので、実際にはもっと高いケースが多いかもしれません。

 

【購入した不動産の例】

・築10年のマンション1室 3,000万円(土地1,000万円、建物2,000万円)
・全額ローンで購入 返済期間30年 利率2.5% 元利均等型
・火災保険料 年5千円 管理費 年3万円
・諸雑費 年10万円
・減価償却の耐用年数 39年
・更新手数料 家賃1か月分
・賃貸料収入 当初 年300万円
・家賃は10年で10%ダウン
・5年に一度修繕費計上
・5年に一度2カ月空き室発生
・所得税率は20% 16年目より定年を想定して10%

 

【1年目~15年目までのシミュレーション】

 

【1年目~15年目までのシミュレーション】

 

【16年目~30年目までのシミュレーション】

 

【16年目~30年目までのシミュレーション】

 

(※)これらの想定の金額は一例です。シミュレーションの計算の仕方や利回りなどのニュアンスがわかっていただければと思い、作成しています。購入する際には、実際の金額で計算をしてください。

 

このケースでは不動産所得がマイナスになる年がなかったので、上記で説明した土地相当金額の支払利息の経費にできない計算はありませんでしたが、全額ローン購入で、土地の割合が1/3なので、もし損失が出た場合には、支払利息のうちの1/3は経費にすることができなくなります。

 

当初は実質利回り3%程度でまわっていますが、修繕費や空き室が出た年は急激に利回りが落ちます。この計算上では、当初家賃の80%まで落ちてくると、経費が増えた年は収支がマイナスになり、持ち出しになってしまいます。これでも、空室率はかなりゆるい計算になっているので、実際にはこの規模の家賃収入で暮らしていくのは厳しそうです。

 

逆に現金購入か早期にローンの返済がなくなった場合には、収支が一転します。ローン返済がなければ、利回りも当初6~7%台で、30年後も5~6%程度は維持しています。これであれば、急な修繕費をまかなっても退職後の生活資金の一部として当てにできそうです。

まとめ

よく税金対策に不動産を購入するという話を聞きます。所得税対策と相続税対策は話が別で、所得税対策は損失が出ることが前提で、相続税対策は賃貸不動産の価額をローンの残高が超える状態をいいます。ただ、いくら所得税対策といっても、毎年の所得でマイナスが出続けてしまうようでは、実際の対策になっているかわかりません。相続税対策も相続後に返済に苦労することになっては意味がありません。購入前に厳しいシミュレーションを行って、後悔のない不動産投資ができるように計画しましょう。

 

執筆者:須栗 一浩 税理士 税理士法人エムエスオフィス 代表
1995年に税理士登録し、これまで個人法人の関与先クライアントは500件をこえる。個人事業の開業から、法人設立、相続税まで含めたトータルのコンサルタント業務をおこなう。企業のICT化も推進し、クライアント企業への導入も進めている。ファルクラム租税法研究会研究員

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