相続財産の名義を変えないままだとどうなる?名義変更が必要な財産を紹介

相続財産の名義を変えないままだとどうなる?名義変更が必要な…

  • Facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最近、相続に関するニュースや記事が増えた影響か、税理士である筆者の事務所へ相続税が心配になった方からの相談がとても増えました。相続財産が少なく相続税の申告が必要ないことがわかるとホッとして、相続が発生しても名義変更をしないままにしていたという話をよく聞きます。しかし、相続発生時に相続財産の名義変更の手続きをしておかないと、あとで手続きが面倒になってしまうことがあります。今回は、相続発生時に名義変更をしないままにしておくとどんな面倒なことになるか、名義変更が必要な財産をいくつか挙げて説明します。

相続財産の分割とは

相続財産の分割とは

 

被相続人が亡くなって相続が発生したら、まず相続人は被相続人のすべての財産や債務を把握することから始める必要があります。財産には預金や不動産、有価証券などの一般的な財産や骨とう品や特許権などさまざまなものがあり、相続人はもれなく財産を把握していかなければなりません。ここで相続財産から漏れてしまうと、誰も気が付かない忘れられた財産になってしまいます。また、のちに財産に気が付いた場合には、もう一度、分割協議や相続税の申告をやり直さなければならなくなります。

 

同時に被相続人の戸籍を遡って、法定相続人を確定します。それほど多くはないですが、戸籍を調べると、いままで関わりのなかった、名前も聞いたことのない相続人の存在が発覚することもあります。所在不明の相続人がいた場合には、家庭裁判所へ申し立て、所定の手続きをとらないと分割協議を進めることができません。

 

財産の特定が終わったら、それぞれの財産価値の評価を行い、それぞれの相続財産がどのくらいの評価額になるかを計算します。普通預金は評価をしなくても評価額がわかりますが、不動産や有価証券は客観的な評価を行わないと公平な分割協議ができないほか、相続税額の計算もできません。特に不動産は、同じ面積でも地形や所在地によってまったく価額が異なります。

 

財産債務の評価が終わったら、財産の状況や評価額を参考に、誰がどの財産を取得し、負債を引き継ぐかを相続人間で話し合います。話し合いが終わったら、分割協議書を作成し、全員で実印を押印して分割協議は終了します。

 

最後に、取得した相続人が分割協議書に基づき財産債務の名義変更を行って、相続税の納税をして、相続は終了します。

名義の変更をしないままでいるとどうなるか

名義の変更をしないままでいるとどうなるか

 

相続が発生したら、一般的には相続人間で話し合いをして、実質的な分割協議を行っていると思います。しかし、財産の種類が多くなかったり取得する財産が暗黙の了解になっていたりすると、分割協議書を作成せずに「そのうち名義変更をしましょう」となって、そのまま名義変更をせずに時間が過ぎていくケースがあります。

 

相続の分割について話し合いをしたら、せめて分割協議書を作成して、実印で押印し、印鑑証明書を分割協議書と一緒に持っておきましょう。そうすることで相続発生後に時間が経っても、相続人が名義変更をすることが可能です。

 

では、分割協議書を作成しないまま時間が過ぎてしまうとどうなるでしょうか。例えば、相続発生時の相続人が亡くなってしまい、多くはその配偶者や子どもが新たな相続人になります。そうなった場合には、分割協議を行う法定相続人の人数が増えてしまい、当初の相続発生時の暗黙の了解もわかっていない相続人たちと分割協議を行わなければならなくなります。

 

当然ですが、最初の相続のときよりも揉める可能性が高くなります。相続発生時には相続人がまだ若く、結婚をしていなくて配偶者がいなかったり、結婚していても子どもは生まれていなかったり、もっと若ければ、まだ成人していなかったりするケースもあるでしょう。

 

分割協議をしないままに時間が経ってしまうと、状況がまったく変わり、相続発生時に相続人だった人が亡くなってしまうこともあります。そのような場合に分割協議をしようとすると、相続時に存在していなかった相続人たちと協議をすることになります。分割協議が思うようにいかないこともあるでしょう。

 

名義の変更をしないままでいるとどうなるか

 

また、当初の相続人が亡くなって、その相続人の相続人は、所在が不明になっている場合も少なくないでしょう。その場合には、家庭裁判所へ申し立てを行わなければならないなど、さらに時間がかかってしまいます。このようなことにならないためにも、相続発生のタイミングで、葬儀の一連の流れとして相続の手続きを進めることをお勧めします。

 

なお、相続税の計算で適用される「小規模宅地の特例」や「配偶者控除」などの適用を受けるには、申告期限内に申告書の提出をしていることが前提になります。よくあるケースですが、相続税の相談などの際に「小規模宅地の特例を適用すれば、相続税はかかりません」という回答をもらっていたために、相続税はかからないと勘違いをして、分割協議や相続税の申告をしない方がいます。しかし、そのままになっていると大変なことになります。

 

小規模宅地の特例は、最大で評価額を80%減額できます。例えば、小規模宅地の特例によって、1億円の土地の評価が2,000万円に減額されるとします。法定相続人は子ども2人で、これ以外に財産がない相続の場合には、小規模宅地の減額の特例を適用すれば相続税額は発生しませんが、適用しない場合には770万円の税額が発生します。

 

相続税はかからないと安心して、申告書の提出をしていない場合には、評価額の減額や税額の減額を受けられなくなるだけでなく、期限後申告の加算税や延滞税もかかってくるため、十分注意が必要です。

名義変更が必要な財産とは

名義変更が必要な財産とは

 

名義の登録がされない財産については、分割協議が完了すればそれで終わりですが、登記や名義の登録がある財産は、分割協議の結果で名義変更の手続きをしなければなりません。

 

不動産

法務局に登記のある土地や建物については、登記の変更をしなければなりません。

 

主な必要書類は以下のとおりです。

 

・被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍、戸籍の附票
・相続人の戸籍謄本、不動産取得者の住民票
・固定資産評価証明書、遺産分割協議書、印鑑証明書、相続関係説明図 など

 

被相続人の戸籍謄本などは、本籍の変更が多くある場合、過去へ遡っていかなければならないので、取得に時間がかかることがあります。

不動産登記の変更は難易度が高いので、司法書士へ手続きを依頼することをお勧めします。

 

銀行預金

銀行の普通預金や定期預金は、基本的には解約をして、分割協議どおりに分けるために振込みをするか、銀行で現金を受け取って分割協議のとおりに分けます。

 

解約に必要な書類は銀行によって違ってきますが、基本的には以下のとおりです。

 

・預金通帳、キャッシュカード
・被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍、戸籍の附票
・相続人の戸籍謄本、不動産取得者の住民票
・遺産分割協議書、印鑑証明書
・銀行所定の用紙

 

銀行所定の用紙には、相続人全員の実印での押印が必要になる場合もあるので、あらかじめ銀行へ問い合わせをして、記入する用紙を取り寄せておいたほうがいいでしょう。

 

また、2019年に施行された民法改正で、預貯金の仮払い制度(払い戻し制度)が創設されました。この制度は、分割協議が終了する前でも、法定相続人が預金の一部の出金をすることができるというものです。

 

参照:全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払い戻し制度」

 

その他

上記以外にも、名義変更の手続きが必要となる場合があるものがあります。

 

有価証券など

証券会社の取引がある場合には証券会社、直接出資をしている場合には出資先の会社などへ連絡し、名義変更の手続きを行います。

 

自動車

名義変更の手続きは、自動車の届け出をしている住所の運輸支局で行いますが、購入したディーラーなどへ依頼してみてください。

 

被相続人が被保険者になっていない生命保険契約

被相続人の死亡で保険契約が終了していない生命保険契約は、生命保険会社へ連絡をして名義の変更をする必要があります。

 

火災保険契約

損害保険会社へ連絡をして、名義変更手続きを取る必要があります。なお、火災保険の対象になっている建物を取得した相続人の名義に変更をします。

 

ゴルフ会員権

ゴルフ場へ連絡をして名義変更を行います。名義変更料がかかるケースが多く、その後の年会費も払わなければならないので、名義変更をせずに売却するケースもあります。ゴルフ会員権は相場があるので、あらかじめいくらほどで売却できるかを知ることができます。

 

特許権などの法的な権利

各官庁で名義変更の手続きを行います。弁理士へ依頼すると安心です。

 

ほかにも名義の登録がある財産は多くあります。相続財産の内容をよく検討し、早めに手続きをとることをお勧めします。

まとめ

以上のように、手続きが必要な財産は多くあります。このほかにも、相続の分割とは関係ないクレジットカードなど、早めに解約をしておかなければ年会費がかかってしまうものもあります。

 

また、携帯電話や固定電話の名義の変更も、意外と手続きに手間がかかるので、相続の名義変更書類一式があるうちに、名義変更や解約の手続きをしたほうがいいでしょう。

 

相続が発生したら、被相続人の日ごろの生活を思い出して、どのような契約があったかを検討し、早めに名義変更の手続きをするようにしましょう。

 

執筆者:須栗 一浩 税理士 税理士法人エムエスオフィス 代表

1995年に税理士登録し、これまで個人法人の関与先クライアントは500件をこえる。個人事業の開業から、法人設立、相続税まで含めたトータルのコンサルタント業務をおこなう。企業のICT化も推進し、クライアント企業への導入も進めている。ファルクラム租税法研究会研究員

  • Facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加