事前に押さえたい!相続対策に潜む落とし穴とは?

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昨今、テレビやニュースで相続に関する内容を目にする機会が増えています。2015年には相続税の改正、2018年には相続法が改正されたこともあり、注目されるようにもなってきています。

 

相続税対策とは、「相続完了までにかかる相続税や所得税などの税金をトータルで少なくしていくこと」です。一方で相続対策とは、「事業継承や相続発生後にもめないように相続を行うこと」です。事前に両方を考えておくことで、相続が発生した場合でも穏便に作業を進めることができます。今回は、主に相続税対策に潜むリスクについて解説します。

相続税対策の重要ポイント

相続税対策において事前に押さえておくべきポイントは、「計画完了までの期間が長い」ということです。これには時間的な余裕ができる良い面のほか、後述する悪い面があります。下記で説明する相続税対策の失敗ポイントのほとんどは、この期間の長さが原因になります。相続税対策を行う場合には、必ず裏に潜むリスクを知っておく必要があるのです。しかしながら、不可抗力的な要因も多く、なかなか予測は難しいです。経済状況・税制改正・亡くなる順番・親族間のもめごとなど、予測できないことが多く発生するために事前にリスクを洗い出しておきましょう。

 

もちろん、人為的ミスによる失敗もあるでしょう。例えば、減価していく建物を生前贈与してしまったり、相続税だけを考えて所得税が多額になってしまったりすることがあります。これらは事前に計画をしっかり立てることで避けられるミスです。

 

また失敗ではありませんが、相続税対策より相続対策を優先させる場合もあります。税金は多くかかるものの「誰に相続させるか」が重要なために生前中の贈与をしておきたい、というのはその一例です。

相続税対策が裏目に出るケース

①経済状況の変化

経済状況の変化は相続税対策で避けて通れない落とし穴です。

 

時間をかけて生前贈与を行っていく場合、価額の高い土地の場合は持ち分すべての譲り渡しを完了するまでに長い時間がかかります。長い時間が経つと経済状況は変化し、環境も変わってしまいます。これが落とし穴になるケースがあります。

 

例えば近くに高層マンションができて贈与していた土地の価額が下がってしまい、ほかの土地を先に贈与しておくべきだったというケースです。価額が下がってしまうのであれば高いときに贈与をする必要はなかったわけです。この場合は、予定通り土地の贈与を行うか、ほかの土地の贈与に変更するかの検討が必要です。

 

実際にはこの逆のほうが多いかもしれません。例えば、郊外で所有していた土地の近くに大きなショッピングセンターができ、近隣の土地の価額が急に上がるようなケースです。この場合、価額が上がってからは計画通りに贈与を進めることができなくなってしまいます。

 

 

②税制改正

法律上、日本の相続税は課税の時期を納税者が選べません。「来年から相続税が増税になるから今年中に相続してしまおう」というわけにはいきません。亡くなった時点での相続税法で課税されることになるのです。来年から相続税の改正で明らかに増税になることが分かっていても、来年の1月1日に亡くなった場合には増税後の課税になってしまいます。

 

これは相続税対策にも大きな影響があります。相続税の改正はそれほど多くはありませんが、2008年の改正ではそもそもの課税方式を変更する改正が議論されたりもしていました。対策を検討した当初から数年後に改正があり、計画した対策自体が無意味になってしまうこともあります。

 

事前の計画を無駄にしたくないという方は、相続時精算課税を行ってください。これは相続までの一連の贈与税課税が優遇されるものです。ただし、税務署への届け出が必要で、一度選択をしてしまうとやめることができません。メリットもあるのですが、相続税が改正になって当初の予定とは違ってしまったとしても、一度選択したらやめられないというデメリットもございます。十分に検討したうえで行うのが良いでしょう。

 

制度自体は、若い世代へ早期に財産を移転し、有効活用してもらおうということから始まったものです。相続税の問題は考えず、決めた相続人へ決めた相続財産を早めに譲り渡すということが決まっているのであれば、選択するメリットもあります。

 

③相続の順番

相続税対策を行う場合には、「両親の財産をいかに少ない税金で相続人である子どもへ譲り渡すか」を目的にすることが多いと思います。

 

ところが、親がいつ亡くなるかわかりません。相続税対策をたて、何年もかけて息子や娘へ生前贈与を行ってきたところで、子どもが先に亡くなってしまい、親が子どもの相続人になってしまうという事態も考えられます。これまでの計画が水の泡になるだけでなく、何もしない方がよかったという結果になってしまう可能性もあります。

 

④親族内のもめごと

相続税対策として相続人へ財産を譲り渡していく途中で、相続人の生活環境が変わって事業を継がなくなったり、親子の間や相続人の間でもめ事がおきたりして、計画通りの相続ができなくなるケースがあります。

 

「子どもに自宅を贈与していたら、贈与し終わったころから親の面倒も見なくなった」という事例も見られています。またこれがきっかけとなり、親子間・兄弟間でもめごとが発生したというケースも少なくありません。事前にリスクを考え、計画を練るようにしましょう。

 

⑤相続税資金

人生100年時代では、生命保険の加入の仕方も落とし穴になる可能性があります。生命保険にはいくつかの種類があり、「死亡保険金が支払われる保険では死亡保険金の支払いが一生続くものを終身保険」といい、「保険期間が区切られて保険契約が決められた年数や年齢で終わってしまうものを定期保険」といいます。

 

終身保険は終身の保障があるため一般的には保険料が高く、定期保険は期限が区切られているため保険料が安いのが特徴です。

 

基本的には死亡保険金を相続税の納税資金にあてるために生命保険に加入するでしょう。被相続人の年齢が高くなってから保険契約を結んだ場合、終身保険は保険料が高額になりすぎてしまう場合が多く、あまり理解せず勧められるままに保険料の安い定期保険に入ってしまっているケースもあると思います。定期保険は長いものでも90歳くらい、通常は80歳くらいで保険契約が終了してしまいます。納税資金として生命保険をあてにしていると、実際には「亡くなった時には保険契約が終わっていた」という思わぬ事態が起こりかねません。このような事態にならないよう保険契約は加入時に確認しましょう。

 

 

このように相続税対策の落とし穴は意外と多く存在します。経済の変動や税制改正の可能性を考えると、数百万円の差はあっという間に埋まってしまうものです。様々なリスクがあるからこそ、事前に契約保険の見直しを行ったり、今使える税制優遇措置を確認したりするなど、余裕をもった相続税対策を計画することをおすすめします。

 

 

【執筆者プロフィール】須栗 一浩(税理士)

税理士法人エムエスオフィス 代表税理士

平成7年税理士登録・開業。平成27年より税理士法人へ合流。現在に至る。会社税務から個人の確定申告、相続税に至るまで活動範囲は広い。固くない、いつでも話せる税理士としてクライアントからの信頼は厚い。ファルクラム租税法研究会研究員

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