相続税対策をしたい方必見!?資産会社の設立とは?

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相続税対策は2015年の相続税改正をきっかけに、より多くの人々の関心の対象になっています。

相続に関する雑誌や書籍はベストセラーになっており、また相続の研修会にも人が集まっています。それだけ関心が集まっている相続ですが、対策を検討するにはいろいろな要素が絡んでくるため全員に当てはまるベストな相続税対策というものを見つけることが難しいです。

親族の関係図だったり、所有している財産の種類だったり、被相続人・相続人の年齢だったりと、様々な要素が絡んでくる相続税対策。このような内容を把握し全ての手続きが終了するまで非常に大変な作業になります。

そんな相続税対策のなかで「資産管理会社の設立」という方法があるのをご存じでしょうか。

今回はこの資産管理会社について説明します。

資産管理会社とは

資産管理会社とは、

「不動産などの財産を所有しているオーナーが、資産の管理を行ったり会社へ資産を譲渡して会社所有にしたりして資産の運用を行っていくことを目的に設立した会社」

を指します。

株式会社や合同会社の設立は比較的簡単です。

資本金の出資は1円から可能で、登記費用や代表印などの実費・会社名・決算月・代表者を決めれば設立することができます。特に合同会社の場合には、設立後に株式会社にある役員の任期がないためおすすめです。

現在は人生100年時代と言われるので、資産を所有していなかった方も会社を設立して資産運用は会社で行うという選択肢が現実的になるでしょう。退職後のやりがいにもつながると思います。第二の人生は資産管理会社を設立して資産を運用してみるというのはいかがでしょうか。

設立のメリット

①所得税対策

資産管理会社を設立することは、 「オーナーの所得分散」「所得税対策」につながります。

 

日本では個人の所得税は累進課税制度を取り入れているため、所得が増えるほど税率も上がります。また、不動産から得られる所得は基本的には家族へ給与の支払いができないため、不動産収入にかかわる経費がほとんどありません。そこで、会社を設立して所得を会社へ移すことでオーナーの所得を減らすことができるのです。

最近の資産管理会社では、オーナーの資産を会社に譲渡し実際に会社資産をもって運用をするケースが増えてきています。後述する「会社へ資産を譲渡した際のオーナーへの譲渡代金支払い」の問題はあるものの、オーナー個人の所得からは完全に切り離すことができ、実際に家族が働けば給与支給の問題はありません。

仮に家族へ給与を支払わずに、会社が利益を出した場合でも心配はいりません。というのも法人税は累進課税になっていないため、オーナーの所得が多く高い税率での所得税の納税をしている場合には、会社で利益を出して法人税を納税しても税金対策になる場合もあるからです。

 

②相続税対策

オーナー所有の資産を会社へ譲渡すれば、オーナー個人の資産からは分離できるため、相続財産から除外することが可能です。ただし、これには大切な条件が2つあります。

 

・譲渡代金を早めに支払うか、債務免除などでオーナーに対する会社の債務を利益に変えること

・オーナーはできるだけ会社設立時の出資をしないこと

 

オーナーが全額出資してしまうと、オーナーの資産は不動産から株式に代わるだけなので、あまり意味がありません。この株式も会社が損失を出していくことで株価をゼロにすることは可能ですが、他の課税のデメリットがあり細かい試算が必要になります。

設立のデメリット

①税制改正

相続税改正は頻繁に行われるものではありませんが、特例で課税財産の減額が始まった場合、法人へ資産を移転しないほうがよかったという場合もあり得ます。例えば、法改正などにより「小規模宅地等の特例」の対象となる面積が大幅に増えて、事業用の宅地等の減額割合が増えることがあれば、会社設立のメリットが消えることも考えられます。

 

②経費が掛かる

会社の設立費用や毎年かかる法人住民税の均等割は個人の場合にはかかりません。しかしながら、会社があるということでそれに伴う経費がかかってきます。

 

③譲渡代金の支払いと譲渡所得税の納税

上記の「資産を譲渡する際の対価の支払い」「譲渡にかかわるオーナーへかかる譲渡所得税の納税」を加味しなければなりません。仮に会社が融資を受けて支払ったとしても、オーナーには現金という相続財産が残ってしまいます。会社からの代金支払いを免除することも考えられますが、譲渡所得税はオーナーが負担することになります。さらに、会社がそのまま利益を出して法人税が課税されてしまうと、ただ税金をたくさん納めるだけになります。オーナーがまだ若ければ現金を子どもへ贈与するなどで相続財産を減らすこともできますが、あまり年数をかけられない場合には相続財産を減らすことができません。

 

④会社の事務作業

会社の複式簿記と個人の複式簿記はかなり違います。個人の簿記は不明な支払いが経費にならないだけで終わりにすることができますが、法人の簿記は不明な支払いを不明なまま処理することができません。会社の経理はお金を管理し、処理に漏れがないようにしなければなりません。この事務作業の負担は意外と大きいです。

また、経理の知識があっても、決算を組んで法人税の申告書を作成することは簡単ではありません。そのため会計と税務の税理士へ依頼は必要になります。

 

⑤会社の廃業は難しい

会社を設立して事業を始めてしまうと、事業をやめるための手続きに手間がかかります。不動産の所有を会社に移してしまった場合、廃業には手間と時間とお金がかかりお金が余分に出ていってしまうだけになってしまいます。④で説明をした事務作業は税理士がサポートできますが、それでもすべてを請け負うことはできません。手に負えなさそうな場合には法人設立を断念したほうがいいでしょう。会社を設立して資産の所有を移す前にその判断をすることをおすすめします

資産管理会社設立時の注意点

資産管理会社を設立する時は以下の点に注意しなければなりません。

 

①小規模宅地等の適用

小規模宅地等の居住用の適用を受けることができる自宅土地を会社所有にすると特例を受けることができなくなってしまいます。この特例は評価額が80%減額されます。この特例を受けられる場合はその状況を維持しておきましょう。

 

②株式の所有

相続全般に言えることですが、相続財産を複数の子どもたちで共有してしまうと、面識のない親戚同士で共有財産をもち合うことになってしまいます。会社の出資金を子どもたちに分けてしまうことで、孫の世代以降はどういう関係になっているのかも分からず、家族間トラブルになる可能性があります。出資金は配偶者と子どもでもつか、子ども1人でもつことをおすすめします。

 

資産管理会社の設立は、日本の税制が所得税の累進税率・譲渡所得税の税率を低い水準で固定しつつ、法人税率を低く抑えている限りは増えていくでしょう。設立前に試算をしっかり行い、上記で説明をしたメリットやデメリットを理解したうえで資産管理会社の設立を検討してください。

 

【執筆者プロフィール】須栗 一浩(税理士)

税理士法人エムエスオフィス 代表税理士

平成7年税理士登録・開業。平成27年より税理士法人へ合流。現在に至る。会社税務から個人の確定申告、相続税に至るまで活動範囲は広い。固くない、いつでも話せる税理士としてクライアントからの信頼は厚い。ファルクラム租税法研究会研究員

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