不動産の生前贈与、そのメリットとは?

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家族や親せきから不動産を遺産として相続することになったとき、「生前贈与」してもらいますか、それとも「相続」を選びますか? 実は生前贈与と相続とでは、メリットやデメリットが大きく異なります。

 

「えっ、相続と生前贈与って違うの?」と疑問に感じたら、この記事でしっかりチェックを。そこで今回は、不動産の相続に詳しい、グリーン司法書士法人・行政書士事務所の代表・山田さんに、相続や生前贈与について伺いました。

 

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▲グリーン司法書士法人・行政書士事務所代表 山田愼一

生前贈与と相続の違い

 

生前贈与と似た制度として、相続があります。
まずは、生前贈与と相続の違いについて伺いました。

 

生前贈与とは、その名の通り、生前に財産を渡すことです。相続は亡くなったあとに財産を相続人に承継させることを指します。生前贈与をされる方のほとんどは、相続税対策で選ばれることが多いですね。

 

最大の違いは、亡くなる前に相続人に財産を渡すようにすること。
そこには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

 

一般的には生前贈与を行う方が相続よりも損をしてしまいます。というのも、生前贈与をすると贈与税を支払わなければなりませんが、この税金が相続税よりも高くつくからです。
しかし例外で節税になることもあります。例えば相続税率が55%にもなるような潤沢な資産を持っている人が、1000万円の贈与を行うとしましょう。一般的には、贈与税率は30%ですので、相続税率よりもやすいことになります。正確には様々な控除があるので、条件にもよりますが、このように相続税の税率よりも、贈与税の税率が低くなる可能性があります。つまり、贈与税と相続税ではどちらが税率が低くなるか、いかに税金を低く抑えることができるかを慎重にシミュレーションすることが肝心です。つまり、生前贈与は得にも損にもなるということです。

 

生前贈与がメリットとなるのは、基本的に限定的なシーンに限られていると山田さん。
このような違いを知らずに相談に来る方も多いことから、生前贈与を行う前にはしっかりと損得を確認することが大切です。

 

大方は相続で受け取る方が損をしません。そのような方が相談に来られたときは『しっかり検討してから選択された方がよいですよ』とお伝えしています。相続であれば、配偶者と子供が2人いることを条件にすると、4800万円まで相続税はかかりません。資産が自宅だけの場合なら、この金額の中におさまることが多いので相続税は実質ゼロですよね。『今まで奥さんが貢献してくれたから生前贈与で家をあげたい』といったご相談もよくありますが、富裕層の方をのぞけば『相続で十分ですよ』とお話しています

 

では、そのほかにどのようなパターンで生前贈与はメリットを発揮するのでしょうか?

 

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生前贈与はいわば相続の前倒しです。自分が生きているうちに、自分の意思で資産を渡したい人に渡せることが大きなメリットです。もう一つの大きなメリットが節税です。例えば子供に、110万円の範囲内で不動産や現金を贈与する場合があります。1年の贈与のうち110万円は贈与課税価格から控除されるんです。贈与税がかからず遺産を減らせるので、相続税の節税になります。ただし、素人の方が見よう見まねで節税対策に利用すると非常に危険です。節税については必ず税理士のアドバイスを受けてほしいですね。

 

そして最大のデメリットは税金、つまり贈与税とのこと。節税にも使える生前贈与ですが、一般的には相続税よりも高くなります。さらにいえば相続時にはかからない「不動産取得税」というのがあり、税金が不動産に3%かかります。

 

加えて登記するときに相続の5倍の「登録免許税」がかかるなど、生前贈与はコストがかかってしまうのが大きなネックだといえます。では、なぜ贈与税と相続税でこのような大きな差があるのでしょうか。

 

生前贈与をするということは、それだけ資産を持っていると税務署はみなすわけです。一方、生前贈与にもいろいろ控除がありますので、活用できるケースはあります。例えば贈与はするが、相続時に相続税として精算することができる「相続時精算課税」です。これは60歳以上の親または祖父母から、20歳以上の子供または孫への贈与で利用可能です。
その代わり落とし穴もあり、途中で制度をやめられません。この控除を使うと「暦年贈与」という毎年発生する控除枠が利用できなくなります。ですから、安易に選択して後悔している人がいることも事実です。
ほかに利用できる贈与控除は、贈与税の配偶者の控除がありますが、どちらか一方で解決しようと思わず、生前贈与と相続の両方をうまく使うのがコツです。

生前贈与をするうえでトラブルにならないためには

 

何かと税金がかかってくる生前贈与。利用には慎重になった方がよさそうです。
最後に、生前贈与のトラブル回避について伺いました。

 

生前贈与の大きなトラブルはいくつかあります。これを回避する方法として、まず、「あげた、あげていない」とならないように、きちんと契約書を作り、不動産であれば登記まですませておきましょう。次に、贈与税を軽減する控除を使うつもりでも、控除の要件を満たしていなかったり、税務署での申告を忘れたりしてしまうと、控除が効かなくなり莫大な贈与税が降りかかることがあります。税金面のトラブルを回避するために、生前贈与には必ず税理士のアドバイスをもらってください。
あと盲点なのは、土地が借地で、建物だけを所持している場合です。建物が二束三文の価値しかないということで建物を第三者に譲渡してしまうのは危険です。なぜなら借地の利用権も贈与の対象となるためです。建物は劣化しても通常土地が劣化するということはありませんので、土地の利用権は何年たっていても高いままです。つまり、譲渡された側は高価な借地の利用権に対して贈与税を支払う義務が発生してしまう可能性があるということです。これを見落として、あとで贈与税がかかってしまった、ということがあります。
しかし、素人の方がこのような部分に気づくのはとても難しいことです。こういったミスに遭遇しないためには、一度、専門家へ相談してみるとよいかもしれません。

 

生前贈与を行うか、相続にしておくか。今一度ご自身の資産状況を確認し、適切なチョイスができるよう専門家に尋ねてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

グリーン司法書士法人・行政書士事務所代表
山田愼一

<プロフィール>
司法書士 行政書士、グリーンネットワーク代表、グリーン司法書士法人・行政書士事務所代表、一般社団法人日本財産管理協会会員、一般社団法人家族信託普及協会会員、NPO法人渉外司法書士協会会員。

<経歴>
2007年にグリーン司法書士事務所を創設。2010年に相続・高齢者問題への対応強化のため、グリーン行政書士事務所を創設。2014年により迅速な総合サービスを目指して協賛士業とともにグリーンネットワークを構築する。2016年には事務所への年間の相談件数が1,500件に。昨年は不動産相続・相続・信託等に関するセミナーを20件以上開催しており、高齢者問題・不動産相続問題の解決のために精力的に活動し続けている。

<URL>
http://green-osaka.com/

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