不動産の売買契約を解約するとどうなる?

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2020年は東京オリンピックの開催年でしたが新型コロナウイルスの影響により延期となり、延期の余波は不動産にも及んでいます。

例えば、オリンピックの開催前から「使用後のオリンピックの選手村」は分譲マンションとして販売されていましたが、オリンピックの延期に伴いそのマンションは引渡しが延期となってしまいました。これを受け、買主は売主と締結している売買契約を解除するか・引き渡しの延期に応じるか、という選択を迫られる通知を受け取ったという話題がありました。このケースでは判断が難しいところがありますが、もし自己都合で不動産の売買契約を解約するとどうなるのでしょうか。ここでは不動産の売買契約の解除とペナルティについて解説します。

自己都合の解約にはペナルティがある

不動産の売買は高額な取引となるため、違約金としての損害賠償の予定額を契約時にあらかじめ定めることになっています。一般的には物件の売買金額の10~20%が違約金の額とされます。そして実際の損害額が大きい・小さいは関係なく、定めた違約金の額を契約に反した側が支払うことになっています。

例えば物件の売買金額が5,000万円だった場合に違約金10%(つまり500万円)となっていれば、実際の損害額が100万円でも1,000万円でも、違約した側が500万円を支払うことで違約に関する請求関係は完了することになります。

 

また、違約金の支払いについて契約時に支払った手付金の扱いも定めており、売主は受け取った手付金を買主に返還してさらに違約金を支払い、買主は違約金から支払った手付金分を差し引いて支払います。

例えば先の例で違約金の額が500万円のとき、支払った手付金が200万円だった場合は、売主が支払う際は計700万円(手付金200万円+違約金500万円)を買主に支払い、逆に買主が支払う際は手付金が戻らず計300万円(違約金500万円-手付金200万円)を売主に支払うことになります。

 

さて、契約違反にはさまざまなケースがありますが、契約後、自分の都合で解約する場合には最後まで契約を履行できないことになりますので、違約となり違約金が発生します。売主が自然災害などやむを得ない理由以外の自己都合で物件を売れなくなった場合や買主が同様に資金を用意できないなど、自己都合で買えなくなった場合はすべて契約違反となります。

 

ただし不動産の売買契約では、契約後一定期間内であれば手付金を放棄することで契約を解約できるという手付解除(解除)と呼ばれるものを定めるのが一般的です。

通常、契約日から1週間~1か月程度の期間を手付解除期限と定めて、その期間内であれば自己都合で解約する場合であっても、手付金相当額を相手に支払うことで契約を解除することができます。

手付解除を行う場合、買主は支払った手付金の返還を求めず解除でき、売主の場合は受け取った手付金を買主に返還し、さらに同額を買主に支払って(俗にいう「売主の手付倍返し」)解除することになります。

 

なお、自然災害など売主買主双方に責任のない原因で物件が修復できないあるいは修復には過大な費用が掛かる場合には契約解除することになり、双方ペナルティなしで売主は買主に手付金を返還して契約が解除となります。

特約があれば、ペナルティ無しで解約できる

原則として前述の通り契約を自分の都合で解除する場合、違約金というペナルティが発生します。しかし自分の都合ではあるものの、住宅ローンの利用など契約時点では不確定な要因がある場合には特定の要因に限ってペナルティなし、つまり違約金が発生しないよう特約を定めておくことが一般的です。

その特約の代表的なものが以下のようなものがありますので、簡単に解説しておきましょう。

 

・ローン特約(ローン条項)

ローン特約(ローン条項や融資特約とも呼ばれます)とは、買主保護のための特約で、契約後、一定期間内に住宅ローンなどの融資が利用できなかった、あるいは物件を購入できないほど融資額が足りないなど融資の条件が整わなかった場合に適用され、ペナルティなしで解約できる特約です。

適用された場合は支払った手付金も全額返還されるのが一般的です。なお、通常、適用される特約期間は1カ月程度で、売主買主双方が納得した期間を定めます。

ただし買主がローンを申し込む際、不正を働いたり手続きを怠って期日を経過してしまったりした場合などは適用されないこととなりますので、注意しなければなりません。

 

・買い替え特約

買い替え特約とは買主保護の特約で、特に売買対象の不動産を購入する前提として現在住んでいる住宅を売却することが必要な場合に採用されます。

特約の内容としては、通常3か月程度の一定期間自宅の売却活動を行って、売却ができなった場合に適用され、ペナルティなしで解約することができます。この特約でも適用された場合は手付金が全額返還されるのが一般的です。

ただしこの特約については自宅の売却活動を依頼する(仲介する)不動産会社を指定されるケースもあります。

なお、特約期日が近づき、自宅への購入申し込みがあるなど売却の目途が立った場合や売主の配慮でもう少し売却活動を認めてもらえる場合には、売主の了解のもと特約の期日を延長できることがあります。

 

また、特約ではありませんが、新築住宅などの売買契約では特に自然災害とまでは言えない天候不順などに限って完成時期=引き渡し時期が遅れる場合、契約で定めた引き渡し期日を過ぎてもペナルティが発生しないよう定められることが一般的です。

 

解約するときは必ず書面で

自分の都合で解約となるときは、特約が適用される場合であっても解約時に解約合意書などの書面を必ず締結することが必要です。そもそも不動産の売買契約は、売主買主双方が納得して契約するものです。そのため、解約についても一方的に違約金を支払うから契約を解除できるというものではありません。

例えば口頭だけで解約を伝えたもののどこかで伝達ミスがあり、一方は解約となったつもりでいても相手方は契約が継続していると認識しているということもあり得ます。こうした場合、たとえ特約が付いていたとしても適用されるか否かについて争いが発生し、最悪違約金を支払わなければならなくなるなどの問題が起きてしまいます。

不動産の売買契約では、解約となる場合、後日問題が残らないように必ず書面で合意解約するようにしましょう。

 

不動産の売買契約では、原則としては契約後すぐでも自己都合による解約では違約金というペナルティが発生することになります。住宅ローンの利用や自宅の買い替えなど特約が必要な場合には、相手と相談して特約を付けてもらうようにしましょう。

 

【執筆者プロフィール】秋津 智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。

横浜国立大学卒業後、神奈川県住宅供給公社に勤務。その後不動産仲介会社等を経て、独立。現在は、自宅の購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う。その他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。

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