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自宅で最期を迎えるために。「終の棲家」づくりに必要なこと

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超高齢化社会に入り、高齢者が増え続ける現代。高齢者施設では、介護人材不足が叫ばれています。「施設に入れない」「入っても満足できるサービスを受けることができない」といったことが想定される中、自宅で最期まで過ごしたいと考える人は多くいます。

 

今回は、これまで、1万件以上の相談を受けてきた、シニアライフの専門家「シニアの暮らし研究所」代表、高齢者住宅アドバイザーの岡本弘子さんに、もし最期まで自宅に住み続けることを選ぶ場合、自宅にはどのような立地や設備が求められるのか、そして終の棲家づくりにおいて大切なこととは何かについて、詳しく伺いました。

最期まで自宅で過ごすことについて

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「自宅で最期まで過ごしたい」という願望を持つ人は、多くいることでしょう。しかし、現在は「老衰」で亡くなる方などを省いて、何らかの病気を患い、病院や介護施設で最期を迎える方がまだまだ多いものです。

 

自宅で最期まで過ごせる方が少ない背景には、在宅医療や在宅介護の体制が不十分であることが挙げられます。現状、ターミナルケアを受けるには、医療連携の整った施設へ入る他ないためです。

 

また、自宅で最期を迎えられない人が多いもう1つの背景に、独居高齢者が増えたことがあるといいます。

 

昔は、二世帯住宅や三世帯住宅は当たり前で、家族の人数も多く、家庭ごとに高齢者を見守る体制ができていたものです。けれど、今は成人し、結婚した息子や娘と別居しているという高齢者が多く、配偶者を亡くしてしまうと1人で住まわねばならない方が増えています。そうなると、子どもからは『何かあったとき、異変に気付けないから心配だ』といわれ、介護施設に入居する方も多いのです。

 

しかし、これからどんどん高齢者の数が増えていくことから、病院も介護施設も、高齢者を受け入れ切れなくなる事態が予想できます。だからこそ、国は、高齢者が病気になったあとも介護が重くなったとしても、住み慣れた地域で最期まで暮らせるように、地域の医療や介護その他のサービスの連携を行う「地域包括ケアシステム」を進めていかねばという意識を持っているのです。

自宅を心地良い「終の棲家」にするために

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地域包括ケアシステムがうまく回るようになれば、これまでより多くの高齢者が、住み慣れた自宅で最期を迎えることができるようになるでしょう。ただ、そういった理想的な状態になるためには、高齢者本人の努力も不可欠です。

 

その努力とは、「終の棲家づくり」。自分が病気になっても、要介護の状態になっても住み続けられるような立地・設備の整った家に住み替える必要があるのです。

 

たとえば、まず形態ですと、一戸建てよりも集合住宅をおすすめします。なぜなら、隣や同じ階に誰かが住んでいるため、自然と互いを気にし合う文化が生まれやすいから。『隣のおばあちゃん、最近顔を見ないなあ。ちょっと様子を見に行こうか』と気に掛けてくれる近所の方たちが、自主的に見守り活動をしてくれるものです。その他にも、マンションであれば、当たり前のようにバリアフリーやエレベーターの設備があります。それに、自分の住む部屋以外の管理を管理会社に任せられることなどもメリットです。また、高齢者が多く住んでいる集合住宅を選べば、もし介護サービスを提供してもらう立場になったときも、同じ建物の要介護者の方と合わせて訪問してもらうことができます。これは、介護・医療従事者の方にとっても効率が良くて助かることでしょう。

 

ちなみに、終の棲家の立地としては「生活の利便性がいい」ことが大事になるといいます。

高齢者は体が弱ってくると車にも乗れなくなり、かといって長い距離も歩けません。だからこそ、最寄り駅やバス停までの距離が近くて出掛けやすいことや、スーパー・銀行・市役所など普段の生活の中で利用する拠点ができるだけ徒歩10分以内にあることなどは、重視した方がいいそうです。

 

それに、駅前のエリアであれば、自然と介護拠点や医療機関も多くなるため、高齢者が自分に合った介護拠点や医師のいる病院を選べるというメリットもあります。

 

その他、終の棲家にはこのような間取りや設備がおすすめでしょう。

 

 

◆間取り

・1人暮らしなら30平米くらいがベスト

(足腰が弱ってくると、部屋の中を移動する際にも、椅子やテーブルの端に触りながら移動できる方が安心である。そうした導線を考えると、広いリビングは不要なため)

 

「こうした、コンパクトな部屋に住み替える際の第一歩目は、荷物の処分からです。これから先の生活の中で、『必ず使うもの』と『すごく気にいっているもの』だけを残して、その他は全部処分しましょう。高価な壺や食器、着物、大事な方からいただいた物を処分するのは心が痛むかもしれません。けれど、大事に使ってくれそうな方に差し上げることで、物の思いは生き続けるので、まずは身の回りをすっきりさせることから始めましょう。」

 

◆設備

・バリアフリー(高齢者は足腰が弱くて転倒しやすいため、階段や段差はNG)

・手すり(廊下やトイレ、お風呂など)

・引き戸(開閉の際に体を後退させなくていい分、扉にぶつからない/車椅子になったときにも通りやすい)

・空調(高齢者は寒さで体調を崩しやすく、急激な温度差によって体に悪影響が出る「ヒートショック」も起こりやすい。だからこそ、たとえば集合住宅であれば館内全体に空調を効かすことができて、玄関扉を開けても「寒い!」とならない、内廊下型の建物が理想。)

 

また、高齢者向け集合住宅の中には、たとえばレストランや大浴場、多目的ルームやホビールームなど、共用部が充実している建物もあります。そうした場所であれば、コミュニティが自然と生まれて友人も作りやすく、いきいきとした老後を送る手助けとなることから、経済的な余裕があれば、そうした場所に住むのも1つの選択肢だといいます。

納得いく「終の棲家」づくりのために

家族

 

終の棲家づくりにおいて、自分の決断とともに大事なのが、家族との相談です。

 

自身が元気なうちに将来を見据えて住み替える場合は、本人が選択して終の棲家づくりを進めていくことができます。その場合にも、必ず娘・息子など家族に相談した上で、決めるようにしましょう。

 

家族や親子だからこそ、『娘や息子は自分の決断をわかってくれるはず』と思い込み、話し合いをしないまま独断で決めてしまって、あとからトラブルになるケースもあります。家族だからこそ、改めてそれぞれの意向とその理由を話し合う場を設けるべきです。そして、その際には必ずお互い本音で話した上で、同意を取って進めてほしいのです。そして、お子さんは、まず『親御さんご本人が、どこでどんなケアを受けて最期を迎えたいと思っているのか』を聞いて、できるだけその願いを叶えてあげるためのプランを、私たちのような専門家と一緒に考えていただければと思います。

 

さまざまな事情はありながらも、将来的に後悔しないために大切なのは、高齢者本人の意志を尊重した決断だといいます。また、急な病気などで高齢者が自身で選択できる状況ではなくなってしまう、といった事態が起こらないように、高齢者は、元気なうちから自分の意志を家族にしっかり伝えて、準備をしておくことが大事だといいます。

 

岡本さん6

 

「今は終活という言葉が一般的になり、エンディングノートを書く人が増えるなど、死について触れることがタブーではない時代になっています。高齢者は、自身が要介護状態になったとき、認知症になったとき、亡くなるときにどうしたいのか、その意志をしっかり書き残しておくことが大事です。そして、ぜひ書いた内容を家族に話しておいてください。」

 

地域包括ケアシステムなどが進めば、きっと最期の迎え方の選択肢も増えてくることでしょう。そのときに、必要なのは自分で最適な選択肢を選ぶ力です。これまで歩んできた人生の幕が閉じるとき後悔しないように、元気なうちから、自身の終の棲家について考えておくようにしましょう。

 

 

 

シニアの暮らし研究所 高齢者住宅アドバイザー 岡本弘子

 

<プロフィール>

15年におよぶ入居相談・紹介業務の経験を活かして、新聞・情報誌等の取材や執筆をはじめ、年に200回以上の顧客・機関・事業者等に向けた高齢者住宅セミナーで講演。「岡本弘子の入居相談室」では、徹底した対面相談で入居者本位の住まい選びをサポートする。(-社)日本住宅相談員協会の代表理事を努めながら、研修講師としてシニア住宅相談員の育成にも注力している。「消費生活アドバイザー・消費生活専門相談員・福祉住環境コーディネーター・インテリアコーディネーター・コミュニケーション心理アドバイザー」などの資格を保有。

 

<URL>

シニアの暮らし研究所

http://shinia-kurashi.jp/

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