2018年4月にスタート!「インスペクション」で何が変わる?

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宅地建物取引業法の一部改正に伴い、2018年4月に施行された制度「建物状況調査(インスペクション)」。

この制度が施工される目的は、売主・買主の双方が安心して取引ができる中古住宅流通市場の構築。

インスペクションの導入によって、業界、そして私たちにどのような影響があらわれるのでしょうか?

インタビュー

▲価値住宅株式会社 高橋正典さん。

 

インスペクションとは何か?インスペクションが私たちの不動産売買に与える影響とは?

不動産業界に詳しい価値住宅株式会社の代表取締役、高橋正典さんに詳しく伺いました。

建物状況調査(インスペクション)とは?

まずは、インスペクションとはどのような制度なのか?高橋さんにうかがいました。

 

「インスペクションとは、専門家が住宅の設計・施工に関して劣化状況や欠陥の有無などを調べ、それらを告知することを指します。2018年4月に、宅建業者が媒介契約の締結時に売主や買主に対してインスペクションの意向を確認し、専門の事業者を斡旋できるか否かを説明することが義務付けられました。」

 

インスペクションを行うこと自体が義務化されるのではなく、宅建業者が売主や買主に業者を斡旋することができるか否かについて説明することが義務化される、という点がポイントです。それでは、このインスペクションが導入される背景はなんなのでしょうか。

「現在日本には約6000万戸の住宅があり、その中の13.5%が空き家という深刻な状況に陥っています。そこで、2006年に住生活基本法が改正され、新築を建てるだけでなく中古住宅を活用しようという国家プランのもと、ここ10年ほどで整備が少しずつ進められてきました。そうした流れの中、中古住宅が売れない大きな要因として浮き彫りになったのが『素性がわからない』ということ。誰が建てて、どういう改修が行われ、今どんな状態なのかがわからないため、大きな買い物であるにもかかわらず、売る側と買う側の情報格差が生じていました。一方、例えば車の場合は定期的な車検制度があり、メンテナンスの記録も残っているので中古でも素性が明らかですよね。そこで、住宅の点検制度として、アメリカ等で行なわれているインスペクションを取り入れていこうという流れになったのです。」

 

買主との情報格差をなくし、中古物件の流通を活性化させるために行われるインスペクション。

実際にインスペクションを行う際には、どのようにして診断が行われるのでしょうか?

次に作業の具体的な内容について伺いました。

インスペクションの具体的な内容とは?

インスペクションでは、どのような調査が行われるのでしょうか?

 

「インスペクションは売主や買主の要望があった場合、宅建業者が専門業者(インスペクター)を斡旋して行われるか、それぞれ自らが専門業者を探して行われます。今回のこの改正宅建業法において定めるインスペクション(建物状況調査)を行えるのは、「既存住宅状況調査技術者講習」を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)だけ。国が定めた「既存住宅状況調査方法基準」に従い、既存住宅の調査を行います。目視調査が主な内容で、基礎や土台、床、バルコニー、内壁、天井といった各所に、ひび割れや欠損、沈み、傾き、雨漏りなどがないかをチェックしていきます。調査の所要時間は2~3時間ほどで、調査結果として10枚前後の報告書を作成します。費用は5万円前後で、依頼する売主や買主が負担します。」

 

建物調査の専門家による、綿密な調査がインスペクションの特徴。

利害関係のない専門家から、信頼性の高い建物の評価が下されます。

インスペクションの、メリット・デメリットとは?

インスペクションを行うことで、売主や買主にどのようなメリットがあるのでしょうか。

まずはメリットから、

 

「住宅の品質が良いことを証明できた場合、築年数に左右されず、適正価格で販売できます。これは売り主にとって大きなメリットであるといえるでしょう。現状は物件の質よりも築年数で評価される市場になっていますが、それが改善されて正しく維持管理そしてメンテナンスができていたかどうかが基準になります。」

 

また、買主としてもその物件の表面的な印象だけでなく、正しい状態を知ったうえで購入するかどうかを判断できます。

費用は自己負担で、2件インスペクションを依頼すれば10万円程度、3件なら15万円程度…と、多少の出費は必要になりますが、自分がこれから住もうとする物件の状態を知ることができるのは、買主にとっての大きなメリットとなるはずです。

 

続いてデメリットについて。

「インスペクションの結果住宅に欠陥や修繕が必要とわかった場合、それがマイナス要素として価格に反映されますし、修繕しないと売りに出せない可能性も出てきます。築年数が最大の評価基準であったことを考えると、これまで以上に維持管理に時間をかける必要があります。維持管理に手間やコストが増えるのは、売り主側にとってはある意味デメリットといえるかもしれませんが、そもそも家を長持ちされるために必要なものです。」

 

2018年4月に施工されたインスペクションにより、中古物件の価値が築年数から質へと移り変わり、より透明性の高い売買が行われることになりそうです。

 

その結果、売り主として思わぬ修繕費用が発生してしまうこともあると思いますが、それにより日々の維持管理の大切さにも気づくことができるでしょう。

物件を“消費する”というこれまでの感覚から脱し、物件を“育み”、検査しながら次の人に繋いでいく。

インスペクションの導入によって、住宅の取り扱い方が大きく変化します。これによって、空き家問題の解消はもちろん、より「人や自然に優しい住宅の売買」が実現するのではないでしょうか?

 

 

価値住宅株式会社 代表取締役 高橋 正典

 

プロフィール
2008年に顧客との永続的信頼関係の構築を目指す「不動産エージェント企業」をスタートさせ、2016年には新たな想いを乗せた「価値住宅株式会社」を設立。良質な住宅を建て長きにわたり住み続けられる「ストック&フロー」の市場に着目し、中古住宅の資産価値の維持・向上を目指す。著書の出版やテレビやWEBメディアへの出演も多数。

 

<URL>
http://kachi-jyutaku.co.jp

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