脱・財政難マンション!住民はマンション管理に意識を向けて

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「マンションの修繕積立金が足りない……」と嘆く財政難の分譲マンションは少なくないと言われています。財政難のままでは、マンションの資産価値が下がる一方。食い止め、財政を健全化させるためには住民の意識が大切です。

 

これまで42,000件超のホームインスペクション(住宅診断)実績のある、さくら事務所ホームインスペクション関西の代表、大森 敞彦さんに、マンションの財政難はどのような弊害があるのか、財政を健全化するために住民には何ができるのかについて、伺いました。

財政難になるワケと引き起こされるデメリット

 

マンションでは、12年から15年に一度、大規模修繕としてマンションの共用部分の修繕工事(外壁の塗装や防水工事)が行われます。その修繕費用となるのが、マンションの住民から毎月一定の金額を集める「修繕積立金」です。修繕積立金の金額は、いつどのような工事を行うかをあらかじめ取り決めた「長期修繕計画」に基づいて決められていますが、この修繕積立金が足りないために工事ができない財政難のマンションがあると大森さんは話します。

 

「1回目の大規模修繕費用は足りても、2回目、3回目となると修繕積立金が足りなくなり、修繕ができない事態に見舞われるマンションが多くあります。修繕積立金の不足にはいくつかの理由がありますが、一番の原因はマンション販売時の修繕積立金の設定です。」

 

マンションを購入する際、売買価格に加えて、管理費や修繕積立金といったさまざまな費用が必要となります。売る側は、できるだけ購入のハードルを下げて買ってもらいたいと思うもの。ただし、管理費は高く取っておきたいので、修繕積立金を国土交通省が定める相場よりも低く設定して、買ってもらいやすくするのです。国土交通省が発行している『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』では、5000平米未満のマンションで平米あたり218円を修繕積立金の目安として定めています。しかし、関西地方の新築マンションでは、平米あたり100円未満の修繕積立金しか取らないところもあるのが実態。これでは、十分な修繕積立金は貯まりません。

 

加えて、修繕工事費が高騰したり、住んでいる住民が高齢化していき徴収が難しくなってきたり、修繕積立金を払わない人がいると払っている人は「不公平感」を感じてしまい新たに滞納されたり……といった要素があいまって、財政難のマンションが生まれてしまうのです。修繕積立金が足りない場合は、マンションの住民から一時金を集める・融資を受けるといった方法があるものの、結局は住民に負担を掛けるため、同意が得られないケースもあります。

 

マンションは財政難になると、大規模修繕ができない状態になり、やがては管理不全になります。ゴミが溜まり、駐輪場には自転車が散乱して、清掃も行き届かないといった状況になるでしょう。今はマンションの数に比べて買い手が少ない時代。このような事態に陥ると、立地や間取りが同じマンションと比べて買い手が付かず、資産価値が落ちてしまいます。」

 

そして、管理不全に嫌気が差した住民はマンションを出て行き空き家が増え、金銭的に出ていく余力の無い方だけが残って、“スラム化”してしまうといった道を辿ってしまう恐れがあるのです。

財政健全化のためにマンション住民は何ができる?

 

では、マンションの財政を健全化させるために、住民にできることはあるのでしょうか。大森さんは、“まずは無関心をやめましょう”と呼びかけます。

 

「マンション管理に無関心だから、『この修繕積立金の金額で、大規模修繕に間に合わない』などとも思わず、言われたとおりの金額を払ったり、ときには『家計が厳しいから』と滞納してしまったりするのです。無関心をやめて、管理に対する意識を変えましょう。

 

とはいえ、住民一人ひとりがマンション管理の重要性に気付いて、いきなり行動を起こすことは難しいように感じます。このような状況下で大事なのは、住民から構成され居住者同士でさまざまなことを決める機関である「管理組合」から、“キーパーソン”が出てくることだと言います。

 

「意識の高い管理組合の理事の方がいるマンションは変わり始めています。さくら事務所ホームインスペクション関西にも、大規模修繕を控えていて資金面で危機感を感じていたり、マンション管理の在り方を正したいと思っていたりする理事の方から相談が寄せられます。まずは、その方を中心に理事会のメンバーを巻き込んでいき、徐々に3人、5人、10人へと理解者の数を増やしていけば、マンション住民全体から管理組合に寄せられる信頼が増していき、たとえば『修繕積立金の値上げ』のような議題への合意形成が取りやすくなります。」

 

特に大規模修繕に向けての話を進めていく際には、理事会とは別に修繕委員会を設け、そこに建築士やマンション管理士などの“専門家かつ第三者”を外部修繕委員として招き入れることで、スムーズに意思決定が進められます。

 

大森さんも理事の方から相談を受けた後、理事会や外部修繕委員会の場で直接、マンション管理の大切さや財政難にならないためにどうすべきかについて説明することもあるのだそうです。

財政健全化によるメリットとは?持つべきは「資産価値」を高める意識

 

きちんとした長期修繕計画をもとに、適切な修繕積立金を集めていけば、住民には多数のメリットがもたらされます。

 

「財政が豊かなマンションは管理が行き届くので、ゴミなども無く外観がすごく綺麗です。美しいからこそ、空き巣が入りづらい・犯罪が起きづらいといった状態になり、安心・安全が守られます。また、財政が豊かであれば、万が一災害が起こった際には余剰金の中から災害復旧のための費用を出せるでしょう。水や非常食を保管しておく備蓄庫を作るなど、災害対策の設備を充実させることもできます。」

 

日本は、欧米のようにマンションを売り買いする慣習が無く、「買ったら終わり」となってしまいがち。資産として扱い、資産価値を高めていこうという意識がまだまだ薄いのが現状です。理事会、そして住民の意識が変わり、「自分たちのマンションの価値を維持・向上し続けないと」という気持ちが生まれれば、財政は健全化されていくでしょう。そして、大規模修繕も行うことができるなど、綺麗なマンションで在り続けられるはずです。まずは自分が住むマンションの現状を知り、改善に向けて動き始めませんか。

 

 

さくら事務所ホームインスペクション関西 代表 大森敞彦
<プロフィール>
業界NO.1(42,000件以上)の実績を誇るインスペクション事務所、さくら事務所ホームインスペクション、関西の代表。
建築や不動産に関わる中で「不動産トラブルを1つでも減らしたい」という思いからホームインスペクターに。2012年10月に関西支部の開業以来、400件超の調査実績を誇る。
専門家ながら、わかりやすく親しみやすい調査・報告に定評がある。ホームインスペクションのリーディングカンパニーとして果たす役割の大きさを実感し、日々依頼者の相談に耳を傾け、アドバイスを行っている。

<URL>
http://00002.sakura-his.com/

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