クラウド経理システムの注意点(システム編)

  • Facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「クラウド経理システム」の進化は、経理の仕事を大きく変えてきています。これまでは、会計ソフトをインストールしたパソコンでしか会計処理作業ができませんでしたが、パソコンがあり、インターネットにつながった環境があれば、クラウド会計システムを使って、どこにいても会計処理作業をすることができます。

 

これだけ便利なシステムであるため、これからはすべてクラウドシステムへ移行すればいいという風潮があります。しかし、クラウド経理システムはそこまで万能なのでしょうか。万能のような言われ方をしているクラウドシステムですが、この先必ず問題になってきそうな点があります。今回は、クラウド経理システムの注意点について説明します。

クラウド会計作業の流れ

クラウド会計作業の流れ

 

経理作業は一般的に次のような流れが想定できます。

 

請求書・領収書管理

請求書や領収書の電子発行は、クラウド経理の中でも最も発展している作業でしょう。通常、以下のような流れで行います。

 

1.インターネットに接続し、ブラウザ上でクラウドシステムにログイン
2.請求書や領収書入力画面で必要事項を入力
3.相手の会社へ送る方法を選んで実行

 

送る手段は、印刷して紙で郵送、PDF形式にしてメールなどで送信、請求内容を確認できるURLをメールなどで送信するWeb発行などがあります。相手先のメールアドレスや住所などをあらかじめ登録しておけば、クリックするだけで完了します。

 

作成した請求書等は、あとからWeb上で確認することもでき、電子帳簿保存法に対応したシステムを使えば、ペーパーレス化も可能です。クラウド会計システムと連携している場合には、ほぼ自動的に請求書データが会計システムへ取り込まれ、勘定科目などを確認しながら登録していくだけで仕訳の登録ができるので、経理作業の効率化につながります。

 

また、メールなどのデータで請求書等を受け取った場合には、データのままパソコンやクラウドに保存することになります。請求書を紙で受け取った場合にはスキャナで読み取って、パソコンやクラウドへ保存することも可能です。クラウド経理システムには、クラウド保存と同時に会計システムへインポートできる仕訳データを作成してくれるサービスがあり、会計システムへの入力作業がほぼ不要になるため、経理作業の効率化につながります。

 

預金管理

ネットバンクを利用すれば銀行まで足を運ばなくても、すぐに入出金を確認することが可能です。また、ネットバンクから入出金情報をエクスポートすれば、その仕訳データをインポートできる会計システムが増えてきています。内容の確認をして登録をしていくだけなので、基本的に残高チェックも不要になり、経理作業の効率化につながります。

 

現金経費の領収書管理

現金経費の領収書集計は、ネット上で内容を確認できるものと紙を使うものの2種類に分けられます。
交通系の電子マネーはネットバンクと同様に、ネット上で支払った内容の確認が可能で、会計システムで仕訳データのインポートが可能です。紙での領収書(レシート)は、経費精算のために経理で集計作業を行うことが一般的でした。最近は、経費の支払いをした人が領収書の写真を撮って、クラウド経理システムへアップロードすると、自動的に集計作業を行い、銀行の振込データが作成されます。

 

また、経理システム内で仕訳データが作成され、そのデータを会計システムへインポートすることができます。経理作業の時間は大幅に短縮され、経理の効率化につながります。

電帳法とクラウド会計の関係

電帳法とクラウド会計の関係

 

電子帳簿保存法では経理書類の保存法を、電子帳簿保存・スキャナ保存・電子取引の3つに分けています。それぞれの保存要件を見ていきましょう。

 

電子帳簿保存

主に会計システムなどに関することで、電子帳簿保存法に対応するシステムであればそのままデータとして保存が可能です。

 

スキャナ保存

請求書や領収書などを紙で受け取った場合に適用されるもので、保存したデータを検索する機能が必要であったり、請求書などを受け取ってからスキャナ保存をするまでの日数の期限があったりするため、ハードルが高くなっています。

 

電子取引

請求書などをデータで発行・受け取った場合に適用されるもので、データのまま保存する必要があります。現在は保存したデータの検索機能を持たなければならないなどの手間のかかる要件があり、今後の改正が待たれます。

クラウド経理システムに不安はないか

クラウド経理システムに不安はないか

 

2021年分確定申告の提出期限前日から当日(2022年3月15日)にかけて、e-Taxシステムに大きな遅延トラブルが発生し、申告書の提出がほぼできない状態になりました。問題はトラブル発生よりも、トラブルが発生した際の法整備がなされていなかったことだと言えます。今回は期限内に提出ができなかった申告書の扱いが公表されるまで数日かかってしまったため、早急な法整備が必要でしょう。

 

パソコンやインターネットにはトラブルがつきもので、トラブルが発生した際に対処をあらかじめ考えておく必要があるはずなのですが、国の方策では「デジタルは間違わない」という姿勢が見受けられます。電子帳簿保存法も現状把握ができていなかったせいで、2022年1月スタートのはずだった改正も2年間猶予せざるを得なくなりました。

 

そもそもペーパーレス化や経理の効率化は国から押し付けるものではなく、官民一体になって進めていくべきものであったはずで、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していった結果、ペーパーレス化を実現したという流れだったはずです。しかし、いきなりペーパーレス化の実現を求めた法改正を行ってしまったために、延期せざるを得なくなりました。まだ、クラウド経理システムも進化の過程にあり、進化の最終地点は見えていません。

 

まず、クラウド全般に言えることですが、データの保存をすべて他社のサーバーに依存しているため、何かトラブルが起きたときに自社だけでは何もできない点は問題です。自社のパソコンでデータを扱っている場合には、データがどこにあるか、どこにバックアップを取っているか、どんなトラブルが予測できるかなど、自社内で対処することができます。

 

クラウドにデータを保存する際は、自社システムの補完的な役割として使用することで、クラウドにトラブルが発生しても自社内のデータがあれば問題は起きません。逆に自社内のパソコンシステムにトラブルが発生してデータを失ってしまっても、クラウド上からデータを復元することができます。

 

しかし、現在の電子帳簿保存法に沿ったクラウド経理システムはすべてクラウドに依存することになりかねないため、クラウドサーバー上でトラブルが発生した場合には、データをすべて失ってしまう危険性があります。その上、一度契約をしてしまうとその会社のクラウドシステムへデータが日々溜まっていくため、他社のサービスへ乗り換えることが難しくなってしまいます。以上のことを前提とした問題点は、次のようなものが考えられます。

 

クラウド会計との契約内容に変更があった場合

提供されるサービスと料金体系が変更になり、これまでの料金では同じ機能が使えなくなることは十分あり得ます。追加料金を払わない場合には、使えなくなった機能を手計算に戻すなどカバーしなければならなくなってしまいます。クラウドサービスに保存されるデータは年々増えていきます。保存容量で料金が決まっている場合には、年々料金が増えていくことになってしまいます。

 

提供されるサービスが変更になる場合もあります。最近、クラウド会計サービスであったケースで、これまでネットバンクとのデータ連携で入力作業が自動化されていたものが、ひとつのネットバンクとクラウドサービス提供会社の連携ができなくなってしまったということでした。結果、ネットバンクからデータをダウンロードして、経理システムでインポートできるデータフォーマットに変更してインポートをするか、仕訳を手入力せざるを得なくなってしまいました。

 

そもそもクラウド会計システムは仕訳の手入力を前提にしていないため、手入力作業に切り替えるととても時間がかかってしまいます。

 

クラウドサービスの提供が終了してしまった場合

現在のクラウド会計は、解約をしても契約期間中のデータはそのまま制限付きで閲覧できるようになっています。しかし、例えばサービスを提供している会社が破産してサービスが終了してしまった場合には、過去のデータを引き続き閲覧できるかという問題があります。もし、データを自社のパソコンにダウンロードするか他のクラウドシステムへ移動する場合には、データをダウンロードできる仕組みになっていなければなりません。また、スキャンデータが多くある場合には容量も多くなり、ダウンロードも相当時間がかかることが予想されます。

 

さらに、電子帳簿保存法の問題で、データを移動すると電子帳簿保存法の保存要件を満たさなくなってしまう可能性があります。例えば「真実性の確保」という要件があり、要件に訂正や削除があった場合に、その事実を確認できなければならないと規定されています。このようなことから、当初のクラウドサービスの保存時に付けられた保存情報とデータは、保存状況を変えないまま次のクラウドサービスへ移行できるようにする必要があるでしょう。

 

自己責任で対処

以上のような問題点のあるクラウド会計ですが、税法が求める要件とは別の問題として、大切な会社の会計データは失うわけにはいきません。

 

そのためには、自社内でのバックアップは必須でしょう。決算を終えたら、総勘定元帳はPDF形式でダウンロードしておき、自社内の保存媒体へ保存しておきましょう。スキャンデータも電子取引のデータも、PDF形式などの簡単に変更できない形式で保存しておくといいでしょう。

 

クラウド会計サービスは、なるべく汎用性のあるデータ形式でダウンロードできる会社と契約しましょう。汎用性があるデータ形式であれば、他の会社のサービスに移行することも容易です。

 

また、できれば他のクラウド会計サービスにはどのようなものがあるかを見ておくことも大切です。新しい機能や料金体系を知っておけば、より使いやすいサービスへ乗り換えることも可能です。ただし、料金の安さだけで選ぶことはやめたほうがいいでしょう。

まとめ

クラウド会計システムは、スキャンデータから文字情報を読み取るOCRも確実なものではなく、より進化していく必要があります。クラウド会計システムに関係する新機能や新サービスはこの先も次々と始まっていくでしょう。経理の効率化とペーパーレス化において、新機能の導入はとても大切なことです。これからの経理作業には今まで以上にパソコンやネットの知識が必要になっていくでしょう。

 

執筆者:須栗 一浩 税理士 税理士法人エムエスオフィス 代表
1995年に税理士登録し、これまで個人法人の関与先クライアントは500件をこえる。個人事業の開業から、法人設立、相続税まで含めたトータルのコンサルタント業務をおこなう。企業のICT化も推進し、クライアント企業への導入も進めている。ファルクラム租税法研究会研究員
  • Facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加