電子帳簿保存法の注意点。2021年改正のポイントは?

電子帳簿保存法の注意点。2021年改正のポイントは?

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2022年に改正法が施行された「電子帳簿保存法」、通称「電帳法」がどんな制度か、ご存じでしょうか。事業をしていない方にはあまり馴染みはないかもしれませんが、今後の国税制度のDX戦略に大きくかかわりがあり、消費税制度にも大きな影響があります。今回は、2022年に施行された電子帳簿保存法の改正を中心に説明します。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは

 

電子帳簿保存法は、高度情報化やペーパーレス化が進む中の1998年に始まりました。税務書類のペーパーレス化は、納税者側にメリットがあるだけでなく、国税庁側も書類を保管するための費用を大きく削減できたり、データ管理が容易になったりすることから、大きなメリットがあります。

 

この先予定されている消費税のインボイス制度も、帳簿書類の電子化なしでは思うように進みません。電帳法が始まった当初は、ソフト面でもハード面でもハードルが高く、あまり現実的ではない要件が多く、それに則ったシステムとハードの導入と開始前に税務署で事前に承認を取る必要がありました。その後、電帳法は何度も改正され現在に至ります。

 

電子帳簿保存法とは

 

引用:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」

 

上のイラストの①~③が電子帳簿保存の内容となります。

 

1. 「電子帳簿等の保存」は、電子帳簿保存法対応の会計ソフトを使用することで大体クリアできます。

 

2. 「スキャナ保存」は、以前は帳票を読み取るスキャナ機器にも決まりがあり、適応しない古いスキャナは要件を満たしませんでした。その後の改正で、現在はスマホで帳票等の写真を撮って保存することも認められています。

 

3. 「電子取引」に関しては、電子取引を行っている場合には要件を満たすことでそのまま対応が可能です。

 

ただ、実際には電子帳簿保存の導入は、法律で求めている要件を満たすために大きな手間と費用がかかり、システムを運用するための専門的な知識が必要なため、当初はなかなか実現できるものではありませんでした。

 

例えば、法改正が進む前は必須であったタイムスタンプの付与という要件がありました。タイムスタンプは、帳票を電子データ化した日時を客観的に証明し、そのときの電子データの内容を証明するデータのようなもので、これは認証局が発行します。このタイムスタンプを付与するためには多額の費用がかかり、紙の帳票の電子化する手間とタイムスタンプを付与する費用を考えると、現実的に導入できるものではありませんでした。

 

しかし、2020年の法改正で、要件を満たしたクラウドサービスなどに電子データを保存することで、タイムスタンプの付与が不要になりました。この改正によってクラウドサービスを提供するIT企業が増え、導入管理費用も比較的安価になったため、経理にクラウドサービスを利用する企業も増えました。

 

こうして、要件の緩和とシステムの進化による費用の減少によって、電子帳簿保存は利用が増えてきています。

今回の改正のポイント

今回の改正のポイント

 

2021年改正(2022年1月1日施行)では、税務署長への事前承認制度が廃止されたことにともない、優良な電子帳簿の要件を満たして税務署へ届け出をした事業者と、最低限の要件を満たすその他の事業者に分けられ、優良な電子帳簿保存を行う事業者には加算税の軽減の優遇措置が与えられ、その他の事業者も事前の承認なしに電子帳簿保存法の適用が可能になりました。

 

2021年改正はかなりの前進とみられました。しかし、電子取引の帳票等は電子データでの保存のみが認められることになり、紙による保存が認められなくなりました。これまでは電子帳簿保存法の導入を希望する事業者が、事前に税務署への承認を取って電子帳簿保存を開始する流れでしたが、導入を希望しない事業者にも電子保存が強制され、しかも、適正に電子保存されていない場合には、青色申告の取り消しに該当するのではないかという話が広がりました。

 

これには大きな混乱が生じ、2021年11月に国税庁のホームページでの「お問い合せの多いご質問」の補足説明にて「直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されるものではありません」という見解を示されました。混乱を生むことになった2021年改正について、2021年12月時点の国税庁の説明は以下を参考にしてください。

 

参考:国税庁「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~」

電子取引書類の完全電子化は可能か

電子取引書類の完全電子化は可能か

 

筆者の私的な見解ですが、電子取引の電子帳簿保存に絡んだ混乱は、経理現場の現実と国税庁側の理想の乖離にあると思います。国としては、ペーパーレス化や経理の効率化などの目的から、会計書類の電子保存化の推進を進めたいでしょう。しかし、インターネット取引がかなり盛んになってきたとはいえ、まだまだシステムは過渡期で、請求書などをメールでやり取りしたり、スマホアプリを使ったり、ブラウザー上だけで完了したりとさまざまな方法があります。これらのさまざまな経理書類をシステム上で容易に電子保存することはできず、経理担当者がさまざまな取引形態から、PDF形式などで電子データの保存を統一して作成し、分類して整理し、会計帳簿と連携をかけるのは、まだ相当な時間がかかると思われます。

 

さらに、電子取引の進化がある程度落ち着かない限りは、経理は常に新しい取引形態に対応し、電子データ作成の流れを検討し続けなければなりません。では、実際に今回の改正の要件に合った電子取引の電子帳簿に対応していくにはどのようにしていったらよいでしょうか。

 

今回の改正で最もネックになるのは、電子データの検索機能です。検索の要件は、取引日付・金額・取引先から保存したデータを検索できなければなりません。これに関しては、電子データの保存内容を表計算ソフトなどで一覧にして検索できるようにする方法と検索項目をデータ名にしてしまう方法が一般的です。どちらもそれなりの手間がかかりますが、検索内容をデータ名にしてしまうほうが簡単ではないかと思います。

 

例えば、以下の内容の請求書があったとします。

 

取引日:2022年2月15日

取引先名:株式会社ABCD

取引金額:1,000,000円

 

この場合は、PDF形式で「2022.02.15.ABCD.1000000」というデータ名にして、電子帳簿保存用に用意したハードディスクなどへ保存しておけば、データ検索はWindowsのエクスプローラーの検索機能で対応することが可能です。

 

電子取引のデータは、紙の請求書などのように作業をしないと机の上などに溜まっていくことがないので、ついデータ名を付けずに溜めてしまうことも考えられます。そうした場合、データを開いて中身を確認してデータ名を付け変えていく作業になるため、紙の処理より何倍も手間がかかってしまいます。取引完了ごとにPDF形式などに変換し、データ名を変えておいたほうがいいでしょう。

まとめ

電子取引は、まだまだこれから新しい取引形態が生まれてくることや、電子マネーの利用度が上がっていくことが考えられます。電子取引の形態は今以上に複雑になっていくことは間違いないでしょう。そのためにも、電子帳簿保存法も今以上に緩和が進み、電子帳簿保存法に対応したより安価で便利なサービスが提供されることが望まれます。そもそも電子帳簿保存という言葉が時代遅れになって、通常な経理業務で意識なく電子帳簿保存が実現されることを期待しています。

 

執筆者:須栗 一浩 税理士 税理士法人エムエスオフィス 代表
1995年に税理士登録し、これまで個人法人の関与先クライアントは500件をこえる。個人事業の開業から、法人設立、相続税まで含めたトータルのコンサルタント業務をおこなう。企業のICT化も推進し、クライアント企業への導入も進めている。ファルクラム租税法研究会研究員

 

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