火災保険や地震保険には加入しないとダメなの?

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近年、地震・台風・集中豪雨による水害・土砂災害など大規模な自然災害が多発しています。こうした自然災害に対して、生活の基盤となる住宅や家財への備えとして“火災保険”や“地震保険”の重要性が増してきています。ここでは意外とわかっていない火災保険と地震保険の違いやその重要性について解説していきます。

火災保険と地震保険の違いとは?

まず、知っておいてほしいことは、火災保険だけに加入していても、地震が原因となる災害はほとんど補償されないということです。

たとえば、地震が原因となる火災で家が全焼しても、損害の最大5%程度(限度額有り)しか保険金が支払われません。(※1)

 

そこで、以下では火災保険と地震保険の補償内容の違いなどについて解説しましょう。

 

火災保険には基本的な補償とオプションがあります。保険会社でもその内容は異なりますが、同じ保険会社でも商品によって補償の範囲が異なります。一般的な火災保険で補償されるものは、火災・落雷・破裂/爆発・風災・雹(ひょう)災・雪災による建物の破損・倒壊・家財の破損/汚損などになります。ここまでは火災保険各社が基本的な火災保険の補償範囲としているものの代表例です。火災だけでなく、落雷や風災などは最近増えている異常気象による自然災害による被害にも適用されます。

また、火災保険のオプションとして追加加入しなければ補償対象とならないものもありますので、オプションの加入状況を確認しておく必要があります。特に、意外かもしれませんが「自然災害による水害や強風による飛来物への補償」「家族が自転車で他人に危害を加えた場合の個人賠償責任」「近隣への水漏れへの補償」などはオプションとなることが多いようです。火災保険のオプションとなるものの例としては、具体的に以下のようなものがあります。(※2)

 

・水漏れ:給排水管からの水漏れなど自分が加害者となり室内が水浸しになった相手の家財等の被害

 

・類焼損害:自宅の火災、破裂・爆発により、近隣の建物や家財に発生した損害

 

・個人賠償:住宅の所有、使用、管理や日常生活における偶然な事故により、他人を死傷、他人の物を破損等させ、損害賠償責任を負った場合の損害

 

・その他:その他、残存物の片付け費用や仮住まい、仮修理費の費用、近隣への見舞金、弁護士費用など

 

 

以上の火災保険の補償範囲を見ると、地震が原因になるものについては保証されていないことがわかります。つまり、地震による被害の補償は、地震保険に加入していないと保険金が支払われないのです。

地震保険に加入することで、地震や津波、噴火による建物の損壊・倒壊、家財の損壊など直接の被害と地震などを原因とする火災など間接的な被害が補償されます。なお、地震保険は単体で加入することができず、必ず火災保険のオプションとしてのみ加入ができる保険という特徴があります。

また、過去の大震災でもわかるように大規模な地震が起きた場合、被害が広範囲に及び補償額も莫大になるため、地震保険に関しては、国が保険金の支払いの一部を負担するようになっています。そのため、地震保険には保険金額と期間に制限が設けられています。建物については5,000万円(家財については1,000万円)、または火災保険金額の30%~50%のいずれか低い金額までという上限があり、加入できる保険期間は最長で5年となっています。

 

(※1)出典:損保ジャパン 個人用火災総合保険『THE すまいの保険』 商品・補償内容

(※2)出典:損保ジャパン 暮らしと保険「ご存知ですか?火災保険の補償範囲」

 

どのくらいの人が保険に加入しているのか

火災保険と地震保険について、どのくらいの人が加入しているのでしょう。ここで平成29年3月に内閣府防災担当から公表されている「参考資料 保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会 報告」という資料を参考にご紹介しましょう。(※3)

 

(※3)出典: 内閣府「参考資料 保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会 報告」

防災情報のページ「保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会」

 

 

この資料によると、2015年度の持ち家世帯の82%が建物の火災保険または共済に加入している一方、地震保険の加入世帯は49%という結果になっています。ちなみに火災保険に水災の補償を付加している世帯は66%です。地震は国内どこでも発生する可能性があると言われていますが、持ち家世帯であっても約半数の世帯しか地震保険には加入していないという結果なのです。また、持ち家世帯に限らず全世帯で見た場合、地震保険の世帯加入率は全国平均で29.5%となっており、賃貸住宅などを含めると地震保険はさらに低い加入率となっていることがわかります。2019年度ではこの全国平均が33.1%まで上昇(損害保険料算出機構)していますが、それでも3分の2以上の世帯が地震保険には加入していない状況です。(※4)

 

(※4)出典:損害保険料率算出機構 「グラフで見る!地震保険統計速報」

 

保険に加入していないとどうなる

実際に被害にあったとき住宅再建にかかる負担は、保険へ加入・未加入でどのように違ってくるのでしょうか。ここでも先の「参考資料」から地震による火災で家が全焼したケースで比較してみていきましょう。(下記「表1」参照)

資料によれば、東日本大震災の参考では、公的な支援として300万円、宮城県の例で義援金が112万円あり、地震保険金として408万円、不足分は災害復興住宅融資などを利用して住宅を再建したという試算があります。

火災保険未加入では、当然ながら保険金が出ません。一方、地震を原因とする火災では、火災保険のみ加入の場合、5%相当しか保険金がなく、地震保険に加入していれば、住宅の新築費用(火災保険で保険金額が新築費用以上だった場合)の半分が支払われます。新築費用に必要な資金は災害復興住宅融資を利用するとしても、借入金額に大きな差があり、その返済額も大きくなるほど被災後の生活に大きな負担となってしまいます。

 

<表1>【単位:万円】

※試算2は、参考資料では地震による直接の家屋被害を前提にしているため、地震による火災を原因として家屋全焼した場合として筆者が作成。

 

大規模な災害では、国が認定した場合に国からの補償が受けられますが、十分な補償とは言えないという実態があり、また局地的なものや被害件数の少ない災害ではこうした国の補償はありません。万一の災害に対する備えである火災保険や地震保険には加入しておいた方が安心であることは間違いないようです。

 

全く保険に加入していない場合と比べれば、火災保険に加入している方が安心です。しかし、基本的な火災保険だけでは補償されない災害も多いのです。近年はゲリラ豪雨など50年や100年に一度という災害が各地で起こっていますから、火災保険に加え水災保険や地震保険についても付帯しておくことをおすすめします。

 

 

【執筆者プロフィール】秋津 智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。

横浜国立大学卒業後、神奈川県住宅供給公社に勤務。その後不動産仲介会社等を経て、独立。現在は、自宅の購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う。その他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。

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