女性の肩を抱く男性

シニアの暮らし専門家に聞く!安心・安全・快適な住まいとは?

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高齢期に差し掛かる60代。

加齢に伴って体力や精神力は少しずつ衰えていくものの、長寿化によって平均余命が伸び続けています。

 

長期に及ぶ高齢期を充実させるには、要介護になったり病気にかかることなく元気に過ごせる「健康寿命」を伸ばすことが重要。

 

健康寿命を伸ばすために必要な要素はいくつかあります。

今回は健康寿命に影響する「自宅形態※」についてご紹介します。

 

自宅形態

シニアの暮らし研究所、高齢者住宅アドバイザーの岡本さんが提唱する「老後生活に必要な条件」の要素。

バリアフリーなど、住まいの設備や形が老後生活に適しているかどうかを指している。

 

自宅形態によって健康寿命の長さが変わるのはなぜなのか?

健康寿命を伸ばすために必要な自宅形態とはどのようなものなのか?

 

黄色のお花と写る岡本さん

 

自宅形態、生活環境、医療・介護環境、家族事情、資金状況の5つの項目から、1人ひとりに合った高齢期の暮らし方を提案する、「シニアの暮らし研究所高齢者住宅アドバイザー」の岡本さんに、お伺いしました。

家庭内事故が増える高齢期

家のなかにある車椅子

 

長年過ごしてきた、住み慣れた我が家。

そんな慣れ親しんだ我が家にも、健康寿命を脅かすさまざまな危険が潜んでいます。

 

高齢者にとって、若い頃に購入した戸建てはとても危険な場所なんです。高齢者の事故の多くは自宅で発生していて、ケガをしたり命を落とす高齢者が後を絶ちません。その数は、交通事故よりもずっと多いのです

 

身体機能・認知機能の衰えに合った自宅形態でないと、慣れ親しんだ場所であっても大事故につながってしまいます。

 

自宅の中でも高齢者にとって最も危険なのが「階段」です。

階段からの転落事故で、毎年多くの高齢者が大ケガを負っています。

打ちどころが悪く、そのまま亡くなってしまう方も多いとのこと。

 

膝に手をあてる人

 

一般的な戸建ての場合、生活動線が階をまたぐため、移動中に足を滑らせて大ケガに至る危険性があります。

 

また、滞在時間の長い「リビング」にもさまざまな危険が潜んでいます。

 

段差を5mm以内に収めるというバリアフリーの基準があるように、ほんのちょっとの段差でも高齢者にとっては危険なんです。電化製品のコードやこたつの布団など、ちょっとしたものにつまずいて大ケガを負うという事例がたくさんあります。また、ラグのように床材と違う素材のものにつまずいてしまうことも多いようです

 

色鮮やかな花越しの岡本さん

 

足腰が弱くなると、スリッパも危険だと岡本さん。

高齢期になると、ちょっとした転倒が骨折などの大ケガにつながるため、リビングのようなフラットな場所でも細心の注意を払う必要があります。

 

さらに、冬場に死亡者が増加するのが「浴室」です。

住戸内の寒暖差によるヒートショックで死亡事故が多発するといいます。

 

冬場に冷えた脱衣所で服を脱いだら、寒さで血管がギュッと収縮した状態になります。そのまま、あたたかい浴槽に入ると、一気に血管がゆるんで脳が虚血(局所的な貧血)状態になり、意識を失うんです。毎年、そのまま浴槽に沈んで溺死してしまう方がたくさんいらっしゃいます。特に一人暮らしの方は発見が遅れるため、非常に危険です

 

バスルーム

 

階段、リビング、浴室、この3箇所で家庭内事故の半数以上が発生しています。

家庭内での事故がきっかけで要介護になる方が多いため、安心・安全に過ごせる自宅形態を選ぶことが健康寿命を伸ばす上で大切なのです。

 

高齢期になると、身体機能、認知機能が低下します。若いころから住み続けている自宅は特に、高齢者が住むのに適していない場合が多いですね。高齢者で戸建てに1人、もしくは夫婦のみで暮らしている場合は、リフォームを行うか、住み替えるか、事故が起きる前に動き出すことをおすすめしています

 

家庭内事故を防ぐ自宅形態に切り替えることで、健康寿命が短くなる要因を減らすことができます。

それでは、家庭内事故を防ぐ自宅形態とはどのようなものなのか?

高齢期になっても安心・安全に過ごせる自宅の条件・特徴をご紹介します。

長く住み続けられる自宅形態とは?

くつろぐ夫婦

 

長く暮らせる自宅の条件として、まずは階段を利用せずに暮らせるようにすることが大切です。

 

住み替えるにしても、自宅をリフォームするにしても、階段を利用しなくていいように、トイレ、洗面所、浴室、キッチンなど生活に必要な機能をすべてワンフロアに集めておくことが大切です。階段を利用した上下移動をなくすだけでも、家庭内事故に遭う可能性を減らすことができます

 

生活動線に階段がある場合は、早めに対策することが大切だと岡本さん。

今は大丈夫だと思っていても、身体機能や認知機能が衰えていくと、階段で事故に遭う可能性は年々高まります。

将来起こるかもしれない事故を想定して、それを未然に防ぐ形態を選びましょう。

 

また、リビングでは「段差をなくす、床にものを置かないなど」転倒する要素をなくすことが大切です。高齢期になると「つまさきをあげる」といった、なんでもない所作でも反応が遅くなります。

長く過ごしている場所だからこそ、危険性に気づけていない方が多く、ふとしたときに重大な事故につながります。

 

清潔感漂う部屋

 

浴室は、できるかぎり寒暖差を減らすこと。

脱衣所に暖房をつけて、浴室を利用する前から温めておくなど、お風呂に入ったときの虚血状態を防ぐための対策が必要です。

寒暖差は循環器系や脳血管系の発作を引き起こす要因となるため、住戸内全体をできるかぎり均一に温められる家が理想的です。

 

30代~40代に建てた戸建てに60代~70代になっても住み続けるのは、リスクが多いと岡本さん。まだ元気なうちに、リフォームを行うか住み替えるか、ライフステージに合った自宅形態を検討しましょう。

 

安全な住まいという意味では、セキュリティに優れた自宅形態を選ぶことも大切だと岡本さん。

 

左上から撮影した岡本さん

 

独居老人を狙った犯罪が年々増えています。戸建ては侵入口が多く、強盗に狙われやすい形態になっています。セキュリティという意味では、侵入口が限られているマンションの方が安全だといえます。エレベーターにも監視カメラがついているところが増えてきましたし、オートロックで侵入を防ぐこともできます。自分の部屋の施錠もベランダの窓と玄関だけ注意しておけばよいので、戸建てよりも安心して生活することができます

 

また、マンションなどの集合住宅では、人と人の距離が近いため、穏やかな「見守り」状態を作ることができます。戸建てに独居するよりは、変化に気づいてくれる人が周りにいるため、マンションの方が安心して生活できる形態だといえるでしょう。

 

戸建てをリフォームして、バリアフリーに対応した自宅形態を作ったとしても、セキュリティ面など生活の不安を少なくすることはできません。

ワンフロアに生活に必要な機能が揃っており、戸建てに比べると温度管理もしやすいマンションの方が、高齢期に適した条件を満たした住まいだといえます。

ライフステージに合った住み替えで安心した毎日を

車椅子に乗る女性と車椅子を支える女性

 

身体機能・認知機能が衰えていく高齢期では、若いころには気づきもしなかった部分が生活の負担となってしまいます。

 

岡本さんのこれまでの相談でも、早い段階でライフステージに合った場所に住み替えなかったことで、重大な事態に発展してしまった人をたくさん見てきたといいます。

 

住み替えを検討しながらも、なかなか踏ん切りがつかずに、若い頃に購入した自宅に住み続けていた夫婦がいました。ご主人が2度も階段から転落して、硬膜下血腫で右半身がマヒ、歩くことができなくなり、要介護になりました。脳にも障害が残ったようです。奥さんはまだ元気だったんですが、久しぶりに会ったら認知症を発症されていました。お子様もいらっしゃらなかったので、こうなると、体力的にも精神的にも住み替えやリフォームは不可能です。不便で危険な家に2人で住み続けるか、別々の介護施設に入るしか選択肢はありません

 

正面から撮影した岡本さん

 

住み替えを検討しながらも、危険な自宅形態の中で住み続けたことが、このような事態を引き起こしました。最初に相談された時点で、リフォームもしくは危険の少ないマンションなどに住み替えていれば、少なくともご主人は今でも健在だったのではないかと岡本さん。

 

ライフステージに合わない自宅形態は、家庭内事故を誘発し、高齢期の健康寿命を短くしてしまいます。

 

リフォームを選ぶかマンションなどへの住み替えを選ぶか、選択肢は人それぞれですが、これから高齢期を迎えるという方は、今の自宅形態でどこまで暮らし続けることができるかを、自身のライフスタイルに照らし合わせながら冷静に判断することが大切です。

 

残りの人生を充実させるための第一歩として、安心・安全に暮らせる自宅形態について考えてみましょう。

 

もちろん自宅形態だけでなく、生活環境、医療・介護環境、家族環境、資金状況それぞれを整えることによって、安全で安心な老後生活が実現します。

最期の最期まで充実した人生を送れるように、早めに住み替えの準備を行いましょう。

 

 

 

■インフルエンサー

シニアの暮らし研究所 高齢者住宅アドバイザー 岡本弘子

 

<プロフィール>

13年におよぶ入居相談・紹介業務の経験を活かして、新聞・情報誌等の取材や執筆をはじめ、年に200回以上の顧客・機関・事業者等に向けた高齢者住宅セミナーで講演。

「岡本弘子の入居相談室」では、徹底した対面相談で入居者本位の住まい選びをサポートする。(-社)日本住宅相談員協会の代表理事を努めながら、研究講師としてシニア住宅相談員の育成にも注力している。

 

シニアの暮らし研究所

http://shinia-kurashi.jp/

 

<資格>

消費生活アドバイザー

消費生活専門相談員

福祉住環境コーディネーター

インテリアコーディネーター

コミュニケーション心理アドバイザーなど

 

<経歴>

1997年~  大手住宅メーカーのCS推進部で生活研究に従事

2002年~  マーケティング会社で生活者視点重視の市場調査・商品開発提案等に関わる。

2004年~  有料老人ホーム等の紹介センターでお客様相談室長として1万件以上の入居相談に対応。

2009年7月 「シニアの暮らし研究所」を創設。

2015年1月 一般社団法人日本シニア住宅相談員協会を設立

 

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