親はどうして住み替えを嫌がるの?住む場所の考え方

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これまでに1万件以上の住み替え相談を受けてきた「シニアの暮らし研究所」の岡本弘子さん。

さまざまな相談の中でも「高齢期を迎えた親の住み替え」に関する相談は多いといいます。

 

その中で頻繁に発生するというのが、「親が住み替えを嫌がり、なかなか納得してくれない」という問題。

 

“親が住み替えを嫌がる理由は何なのか?”

“また、親に住み替えを受け入れてもらうには何が必要なのか?”

 

岡本さんに詳しく伺いました。

「親の住み替え」に関する相談事例

 

まずは、これまでの相談実績の中から「親が住み替えを嫌がる事例」をご紹介いただきました。

岡本さんの話をもとに、ふたつの事例をご紹介します。

 

 

相談事例.1

相談者は、40代の男性。相談内容は、住み替えに納得してくれない母親をなんとか説得したいというもの。

相談者の両親は、都心から2時間程離れた田舎に70代前半の両親が住んでいました。お二人とも元気ではあるものの、近くに兄弟や親戚など頼よれる人がいないため、男性が両親に都心のマンションに引っ越すことを提案しました。両親はそれを快諾し、住み替えに向けてマンション選びをスタート。

男性宅から徒歩5分程度の分譲マンションに空きが生まれたため、田舎の戸建てを売却しマンションを購入しました。しかし、住み替えが確定して以来、母親がふさぎ込み、住み替えを嫌がりはじめました。新しいマンションの利便性や現在の戸建てで住み続けることの危険性を伝えているものの、なかなか首を縦に振ってくれず、岡本さんに相談してきました。

 

相談事例.2

相談者50代女性。相談内容は、戸建てに独居している70代後半の父に住み替えをしてほしいというもの。

相談者の父親は、奥さんを亡くして以来2年間戸建てでの独居を続けていました。相談者の女性は、車で15分程度の場所に住んでいるため、週に1~2度は様子を見に来ているというものの、ケガや病気など緊急事態には対応できないため、同居するか近くのマンションに住み替えてほしいと提案しました。

しかし、父親は40年以上住んでいる戸建てを手放す気がなく、最期まで住み続けることを希望していました。相談者の女性は、少しでも安全・安心な環境に移り住んで欲しいと望んでおり、なんとか説得できないかと岡本さんに相談してきました。

 

 

親が住み替えを嫌がる相談の中でも、こうした相談が多いとのこと。

メリットがあるはずなのに、親が住み替えを嫌がるのはなぜなのか?

その原因について、岡本さんに詳しく解説いただきました。

住み慣れた街から離れるストレスとは?

 

親が住み替えを嫌がる理由。

そこには、長年暮らし続けた住まいへのさまざまな感情が関係しています。

 

自分の城を捨てたくないという意識が住み替えを嫌がる理由のひとつです。マイホームを宝物のように思っており、年齢に合わせてリフォームを施しその家で暮らし続けるという方も少なくありません。また、子どもと離れて暮らしている場合は、年に数回でも帰ってくる子どもや孫の居場所を置いておかなければならないと考えて、住み替えを拒否する方も多いですね。」

 

自身の思い入れや家族との想い出が詰まった戸建ては、両親にとってかけがえのないものです。

だからこそ、住み替えをすることで得られるメリットを差し引いても、簡単に手放せるものではありません。

また、戸建てとマンションという住空間の違いも、住み替えを嫌がる理由のひとつになっているといいます。

 

3

 

戸建てからマンションに住み替えるとき、なんともいえない閉塞感を感じるんです。戸建ては、庭など屋外の敷地も含めて自分のスペースですが、マンションは屋外スペースが共有の場合が多いですよね。屋内スペースのみで生活することに対しての寂しさや息苦しさが、住み替えを嫌がる原因のひとつになっています。

 

さらに、何十年も住み続けることで感じる地域への愛着も、引越しを遠ざけてしまう原因のひとつ。

 

駅が近いとか、徒歩5分圏内にスーパーが複数件あるというようなメリットを理解していても、住み慣れた地域から離れるのは難しいものです。駅から遠くても、使い慣れたバスがあるから大丈夫という方も多く、何十年も暮らすことで得られた使いやすさ、住みやすさは、簡単に忘れられるものではないのです。

 

家や地域への愛着、使いやすさ、住みやすさなど、さまざまな感情が入り交じり、なかなか住み替えに納得できないとのこと。

 

しかし、実際に都心で暮らすことのメリットを体感すると、多くの方々が住み替え後の生活に満足するようです。満足度が高いからこそ、住み替えをスムーズに進めてほしいと岡本さん。

 

それでは親が住み替えを嫌がっている場合、どのようにアプローチするのが最適なのか?

住み替えをスムーズに進めるための方法について、岡本さんに伺いました。

最適解は、“同じ街でより安全な住まいへ”

 

戸建てからマンションへの住み替え。

住み替えをスムーズに進めるには“環境の変化を最低限に抑えること”が大切だといいます。

 

一番いいのは、同じ地域の中で戸建てからマンションに引っ越すことです。環境の変化を最小限に抑えることで、住み替えのストレスを抑えることができます。それができない場合は、生まれ育った場所、かつての職場があった場所、若いころに一人暮らしをしていた場所など、土地勘のある場所を選ぶことが大切です。そうすることで、住み替えへのストレスや不安を和らげることができるのです。

 

住み替え先に何度も訪れること”も大切だと岡本さん。

 

検討期間に、その地域、部屋に一緒に訪れるということが大切です。一度だけではなく、何度か訪れながら一緒に下見を繰り返すことで、地域や街を身近に感じてもらえるようになります。訪れるたびに愛着が増し、街や部屋の魅力を伝えることで、少しずつ住み替えをしたほうがいいのかなという気分になっていくんです。

 

また、このような相談を受けた場合は「必ず親子で一緒に考えながら進めてください」と相談者に伝えているとのこと。一緒に見て、一緒に考え、一緒に決めることが、円満な住み替えにつながると岡本さん。

 

戸建てに住み続けることのリスクを説明しながら、時間をかけて進めることが大切なのです。

 

住み替えを嫌がる親に納得してもらうために必要なのは、「環境の変化を最低限に抑える・住み替え先に何度も訪れる・親子で一緒に考えながら進める」の3点。

 

親に住み替えをしてほしいけど、なかなか納得してくれない……」そんな悩みを抱えた方は、上記の3点を意識しながら、親との話し合いを進めてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

 

シニアの暮らし研究所 高齢者住宅アドバイザー 岡本弘子

 

プロフィール

1万件以上の入居相談・紹介業務の経験を活かして、新聞・情報誌等の取材や執筆をはじめ、年に200回以上の顧客・機関・事業者等に向けた高齢者住宅セミナーで講演。

「岡本弘子の入居相談室」では、徹底した対面相談で入居者本位の住まい選びをサポートする。(-社)日本住宅相談員協会の代表理事を努めながら、研究講師としてシニア住宅相談員の育成にも注力している。

 

資格

消費生活アドバイザー

消費生活専門相談員

福祉住環境コーディネーター

インテリアコーディネーター

コミュニケーション心理アドバイザーなど

 

経歴

1997年~  大手住宅メーカーのCS推進部で生活研究に従事

2002年~  マーケティング会社で生活者視点重視の市場調査・商品開発提案等に関わる。

2004年~  有料老人ホーム等の紹介センターでお客様相談室長として1万件以上の入居相談に対応。

2009年7月 「シニアの暮らし研究所」を創設。

2015年1月 一般社団法人日本シニア住宅相談員協会を設立

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